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ヤスオーのシネマ坊主
あるお方の『シネマ坊主』のパクリです。
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ロック、ストック

      &トゥー・スモーキング・バレルズ

大勢の登場人物さえ把握できれば誰が見ても面白い映画

r081376591L.jpg ★★★★★★★★★☆ 

 監督/ガイ・リッチー

 出演/ニック・モラン、ジェイソン・ステイサム、

     ジェイソン・フレミング

             (1998年・英)

 ロンドンの下町で暮らしているエディは、カードの腕前には自信を持っていました。ある日彼は、ベーコン、トム、ソープという3人の友人に、ポルノの帝王と呼ばれるギャングのハリーにカード勝負を挑むという儲け話をもちかけます。仲間達はエディのカードの腕を信じ、4人で10万ポンドを用意し、それを元手にエディはカードゲームの会場に乗り込みました。しかし、海千山千のハリーのイカサマにはまってしまったエディは、手持ち金以上の50万ポンドも負けてしまいます。大きな借金を背負ったエディ達にハリーは、1週間以内にカードで負けた金を支払わなければエディ達の指を詰め、それでも返さないときはエディの父親のバーを取り上げると言い放ちます。借金を返すあてのないエディ達4人は知恵を絞り合いますが、これといった名案は出てきません。しかし、エディが住むアパートの部屋の壁から、隣人の強盗計画が聞こえてきたことから、事態は思わぬ方向に転がり出します。

 この映画はかなり面白かったですね。第一に、脚本の完成度が非常に高いと思います。2丁の銃と麻薬と大金を巡って、主人公達4人組、主人公達を陥れたマフィアとその用心棒、コソ泥コンビ、麻薬の栽培をしている金持ち坊ちゃんグループ、強盗を計画しているグループ、子連れの取立て屋、麻薬王の黒人ギャングとその手下達、などかなり多くの登場人物が入り乱れて、色々な騒動が起こります。

 それぞれが自分の思惑で動き、その行動が思わぬところで交錯し、複雑に絡まりあいながらストーリーが進んでいき、ラストはスッキリ、という感じの話で、もちろんラストに向かってパズルが完成していくような面白さもあるんですが、僕が何よりもこの映画の脚本が面白いと思ったところは、それぞれの人間の思惑が微妙にかみ合っていないところです。そのズレのせいで、真剣に何かやればやるほどドツボにはまっていくヤツらもいれば、望んでもいないのに貴重な物を偶然手に入れるヤツもいる。そのような全体に漂うユーモアがこの映画の個性であり、良さだと思います。

 そして、何だかんだいってラストが勧善懲悪になっているところや、登場人物がみんなどこかヌケてるところ、殺人シーンなどの生々しい描写がないところなども、この映画が好感の持てる作品になっている理由だと思いますね。一歩間違えればご都合主義のバカバカしいだけの映画で、特に感動とかはないし、人生にも何の影響も与えない映画なんですが、見た後は非常に気分がスカッとします。

 脚本以外の面でも、カメラワークからは作り手側のこだわりが伝わってきますし、音楽と映像の組み合わせ方も素晴らしいです。作品全体のテンポもいいので、面白いだけでなくかっこ良さも兼ね備えている映画だと思いますね。舞台となるイギリスの下町の雰囲気もなかなかいいんじゃないでしょうか。清濁のエッセンスが飽和せずに渦巻いている、混沌とした感じです。こういうところで暮らす人たちは、本当に地に足つけて生きているなあと思いますからね。それを演じる役者達も素晴らしいです。はっきり言って美男子ではないんですが、全員が適役と納得できるぐらいのいい面構えをしています。
 
 まあ、主要な登場人物が今思い出しただけでも20人以上いて、一人一人きちんとキャラクター付けがされていたかというとさすがにそうでもないのですが、その中でも、自分のことは棚に上げて子どもが汚い言葉を吐くとすぐ注意する取立て屋や、本当にマヌケなコソ泥コンビなんかは、ユーモラスでいい味出していると思いますよ。主人公の4人組はあまり目立っていないんですが、「何もしていないのに、自分達があずかり知らないところで何かが起こり、結局はうまいこといった。」みたいな役割でこれはこれで面白いし、いいと思います。

 というわけでこの映画はかなり気に入りました。僕はこの映画を見て「パルプ・フィクション」に似ているなあと思ったんですが、その「パルプ・フィクション」よりも好きですね。ちょっときっちりまとまりすぎていて、スケールが小さく見えてしまうところだけがマイナスでしょうか。評価は★9です。

 ちなみに僕はこの映画を妹にも薦めてみたのですが、彼女の評価は芳しくありませんでしたね。登場人物が多いので見分けがつかず、誰が何をやっているのかがわからなかったので、結局話もわけがわからんかったそうです。まあたしかに、ボーッと見るには不向きな映画ですね。しかし、登場人物とその相関性さえ把握できれば、男だろうが女だろうが誰が見ても面白い映画だと思いますよ。登場人物は男ばっかりで非常に男臭い映画ですが。





<ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 解説>

 本作で一躍名を成したイギリスの俊英、ガイ・リッチー監督・脚本によるクライム・ムービー。一攫千金を狙う4人の若者を軸に、ギャングやマフィアを入り交じって繰り広げる群像劇を独特のユーモアを交えて描く。巧妙なストーリー展開やテンポある演出に加え、多彩な登場人物が見せる妙な味わいが秀逸。ロンドンの下町に生きるエディはある日、仲間3人から金を集め、ギャンブルに投資するが惨敗。逆にその元締めに多額の借金を背負ってしまう。返済猶予は一週間。途方に暮れるエディたちだったが、彼らは偶然隣人の強盗計画を耳にする。

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サイレン FORBIDDEN SIREN

それだけはやめてほしかったと思う残念な終わり方です。

c100636711_l.jpg ★★★☆☆☆☆☆☆☆ 

 監督/堤幸彦

 出演/市川由衣、森本レオ、田中直樹

 (2006年・日)

 

   1976年に、全島民が消失するという未曾有の大事件が起きた「夜美島」という島に、病弱な弟の静養のためにフリーライターの父と家族3人で引っ越してきた由貴が主人公です。その島に到着した由貴達を見る島民達の視線は何ともいえない不快なものでした。そして、由貴の隣の家に住む怪しい女からは、「サイレンが鳴ったら外に出てはだめ。」という気になる忠告を受けます。それが、由貴が直面する恐怖の始まりでした。

 この映画は、ストーリーというか最後がしっかりしていれば、たぶんいい映画だと思うんですね。この映画の最大のウリであろう音響という点では僕は映画館で見ていないので何とも言えないですが、それ以外の面でもこの人は見せ方、盛り上げ方が上手いなあと思いましたね。民家のたたずまいや謎の宗教施設など島全体が謎めいた独特の雰囲気を醸し出していて、映画の世界にじわじわと引き込まれていきます。全体の構成、テンポなんかもいいですから、中盤からヒロインにだんだんと迫って来る恐怖や、終盤の襲撃、逃亡のシーンなど、かなりの緊迫感と迫力がありました。
 
 そういえば昔これと似たような映画を見たことがありました。洋画なんですが、デビッド・フィンチャー監督で、マイケル・ダグラス主演の「ゲーム」という作品です。この映画もスピード感があって、スリリングな展開で、最後の最後までハラハラドキドキさせるんですが、最後は「オイッ!」と思わず言ってしまうような終わり方です。しかし、落ち着いてよく考えてみると、「これはこれで大きな矛盾があるわけではないし、まあこういうのもありやな。『セブン』の後にこんな映画を作るなんで、さすがデビッド・フィンチャーだな」と思わずニヤけてしまうようなしてやられた感があって、決して悪い作品ではないです。しかし「サイレン」の方はそれだけはやめてほしかったという残念な気持ちだけが残るどうしようもなく陳腐な終わり方です。

 ちなみに、オチの後の本当のクライマックスにまたどんでん返しみたいなものがあるんですが、それがどうでもいいと思えたぐらいこのオチで力が抜けましたね。それまで真剣に見ていた自分がアホに思えてきました。島民の奇妙な儀式、謎の赤い服の少女、人魚伝説、パソコンに残された映像などの数々の謎は、いったい何だったんだよということじゃないですか。すべてほったらかしですからね。このオチだと説明する必要もないのかもしれませんが。

 このオチだとあまりにもあんまりなので、もしかすると僕は重大な解釈違いをしていたのかもしれない、この映画はもっと深い別の解釈ができるかもしれないと思い、色々見終わった後も考えましたよ。しかしどっちにしろこの映画は色々な謎についてあまりにも説明不足なので、あくまで想像の域は出ませんでした。

 しかしこの映画は間違いなくオチが理由でしょうもない映画のレッテルを貼られていると思うし、そんなことは作り手側も想像つくはずです。それだったら、ゲームのストーリーをそのまま持ってきてくればいいと思うんですけどね。
僕はゲームの方はまったくやったことないですし、どんな話かもまったく知らないですが、映画化されるほど人気が出たということは、間違いなくこんな終わり方の話じゃないと思いますし。

 というわけで、この映画はラストにいくまではすごく面白かったんですけど、ラストがあまりにもダメなので、そこで評価がガクンと下がって★は3としときます。やっぱりラストがダメな映画は、どう考えても印象は良くないですね。

 あと、森本レオとココリコ田中は演技力うんぬんというよりもホラー映画には出したらダメでしょう。この2人が何しようが全然怖くないですし。

 




<サイレン FORBIDDEN SIREN 解説>

 国内外で大ヒットした同名ゲームを題材に「ケイゾク」「トリック」の堤幸彦が監督した新感覚スリラー。映画初主演の市川由衣が、29年前に謎の失踪事件が起きた島で怪現象に巻き込まれる少女役に体当たり演技で挑み、森本レオ、ココリコの田中直樹、阿部寛ら個性派キャストが脇を固める。物語の鍵を握るサイレンの“音の恐怖”に着目したほか、その謎を追う顛末で明らかになる「衝撃の3回転結末」など斬新な展開に圧倒させられる。
 1976年、ある島で全島民が突如消失する事件が起きる。事件から29年後、その島に家族とともに引っ越してきた天本由貴(市川由衣)は、隣人(西田尚美)から“サイレンが鳴ったら外に出てはならない”との警告を受ける。

油断大敵

あまり有名ではないが、見て損はしない映画

c100322151_l.jpg ★★★★★★☆☆☆☆ 

 監督/成島出

 出演/役所広司、柄本明、夏川結衣

 (2003年・日)

 

  妻を亡くし、男手ひとつで娘・美咲を育てている刑事、関川仁が主人公です。駐在所勤務から泥棒専門の刑事になったばかりの彼は、ある日、ひょんなことから大泥棒の通称「ネコ」こと猫田定吉を逮捕します。しかし、ネコは警察の取り調べをのらりくらりと交わし、ベテランの刑事をもっても自供させることが出来ません。ところが、仁の実直さを気に入った彼は、仁にあっさり自供を始め手柄を与えたうえに、泥棒刑事としてのイロハまでも教えてくれ、仁も成長していきます。

 この映画は、役所広司と柄本明というビッグな俳優2人が出ているのに、ビデオ屋で偶然見つけるまで存在をまったく知りませんでしたね。全体的に野暮ったく、今風のオシャレな映画では決してないので、イマイチ話題にならなかったんでしょう。たしかにストーリー展開はまったりしてるし、映像も地味です。2003年に作られた映画とは到底思えません。1980年代の邦画の匂いがします。監督の成島出も今となっては「フライ,ダディ,フライ」なんかでそこそこ有名ですが、この頃は無名だったでしょうし。

 しかし、すごい面白いわけではないですが、そこそこいい映画なんですよ。笑いあり涙ありの人間ドラマなんですが、地に足をつけて生きている生活感のある人間を一人一人しっかりと描いています。舞台となっている田舎の風景も、どこかノスタルジックでいい感じです。そして何よりも、主演の役所広司と柄本明が、役にピタリとはまっているうえに演技が上手い。この映画はこの2人の絡みのシーンが多いので、ある意味この2人がダメな役者だったら作品全体がダメになってしまうところですが、さすが大物2人といったところで、掛け合いのシーンは見てて面白かったです。

 この映画が実話に基づいていて、モデルとなっている刑事や泥棒が実際にいるというところもまたすごいですね。今時こんな朴訥な刑事と、自分の美学を持った泥棒なんていないですから。僕の今の職場は刑事さん達と仕事をすることがけっこうあるんですが、ベテランの人はともかく、若い刑事さんなんて物腰は柔らかいし、スマートだし、一見銀行員やサラリーマンに見えますからね。もちろん刑事さんと仕事をするということで、罪を犯した人たちとも会ったりするんですが、美学を持っているようには到底思えない人ばかりです。

 また、この映画はこの2人が演じる刑事と泥棒の奇妙な友情を描いているだけでなく、刑事とその娘という家族愛も題材になっています。父親が学童保育の女の先生といい仲になっていくと、娘は激しく抵抗し、病み上がりにも関わらず先生の作った食事を食べず、パジャマ姿で米をといだり掃除機をかけたりして、自分が1人で何でもできることを父親にアピールし、父親に再婚を思いとどまらせます。そしてこの娘はそのことをずっと気にしていたらしく、お父さんにぬか漬けを食べさせるために自分でぬか床を毎日かき混ぜたりしているんです。いくら好きな父親のためとはいえ、このくらいの年頃の子でぬか床をきちんと管理する子もそうはいないでしょう。先日見た「誰も知らない」が対照的な映画であったこともあって、この2人の親子愛にちょっと感動してしまいました。
 
 しかし、この娘も成長して、自我が芽生え、看護の勉強をし、世界中の恵まれない子どもたちのために海外に行きたいとか言い出すんです。父親にしてみれば、まあ自分は娘のために自分の幸せまで犠牲にして、一生懸命育ててきたたわけですから、そりゃ反対しますね。しかし最後には父親として、娘が自分の翼で飛び立とうとしている邪魔はしてはいけないということを理解し、旅立たせるわけです。このあたりも感動するシーンのはずなんですが、どうも高校生の娘役の前田綾花の演技がひどすぎて、イマイチでしたね。こういう地味な演出の映画はどうしても一人一人の演技をじっくり見てしまいますから、もうちょっとマシな女優にしてほしかったと思います。

 この映画の点数は★6ぐらいでしょうか。名作というわけではないですが、見て損はしない映画です。最近のTVドラマではあまりこういう作品はないので、この映画も存在価値はあると思いますね。

 しかしタイトルはダメですね。ほのぼのとした映画なのに、「油断大敵」というタイトルではどこか殺伐としたイメージを抱かせてしまいます。「オイッチニ」とかでいいじゃないですか。この映画に登場するピンチを脱出するおまじないです。「オイッチニー、オイッチニー、オイッチオイッチオイッチニー」というメロディがけっこう印象に残ります。





<油断大敵 解説>

 駐在所勤務から泥棒専門の刑事になった関川仁。彼は妻を亡くして以来、独りで8歳の娘・美咲を育てながら仕事に励んでいた。そして、仁がこの新任地に赴いて1年が経ったある日、だるま工場で盗難事件が発生する。数日後、美咲の自転車が故障した際、たまたま出会った男に修理してもらう仁。だが彼はこの時、男の工具鞄の中にだるま工場で飼っていたピラニアの餌の缶を発見する。実直で腰の低い仁を刑事と見抜けなかった男は検挙されるが、その正体は、何度検挙されても口を割らず最終的に逃げ切ってしまうという伝説の大泥棒・猫田定吉、通称ネコだった。

誰も知らない

監督が母親の責任を棚上げしていることは許せない。

r081973033L.jpg ★★★★★★☆☆☆☆ 

 監督/是枝裕和

 出演/柳楽優弥、北浦愛、木村飛影 

 (2004年・日)

 

  母親と、その子どもの4人の兄妹の話です。子どもたちは母親によって社会から隔離され、学校に通うこともなく、特に下の弟妹はアパートの部屋から出ることすら許されません。しかし彼らはそれを受け入れて生きてきました。ある日母親は、現金20万円と「京子、茂、ゆきをよろしくね」と記した長男の明宛の書き置きだけを残して姿を消します。残された子どもたちの、自分達の生活を守り抜くために日々を生きていく姿を描いた話です。

 まず言っておきたいんですが、僕はこの映画は好きではありません。しかし、非常に完成度の高い映画です。演出も、編集も、撮影も、どこをとっても作り手の魂が感じられ、凄みすら感じさせる作品です。照明や音楽なども抑えているように見えますが、それがかえって静かな迫力を醸し出しています。僕も映画好きのはしくれとして、好き嫌いは置いといてこの映画が優れていることは認めます。

 この映画の秀逸な点としてまず言えることは、映画の世界観を壊してしまうようなナレーションや説明的なセリフは一切ないのに、子どもたち4人の父親が違うことや、子どもたちが学校に行かせてもらってないのにそのことに対して母親を憎んだりしていないこと、それどころか母親を愛していることなどを、上手な描写で自然にこちらに伝えてくれるところです。僕はよくドキュメンタリー番組も見るのですが、ああいうのは変にナレーションがたくさん入ってることが多く、こちらはあくまで見てるだけの第三者であることを再認識させられるので、登場人物に素直に感情移入できないですからね。

 また、実際に起こった事件が素材とはいうものの、この監督は事件の起こった状況、背景をモチーフにしているだけで、独自の解釈で作品を作っています。また、実際の事件は1980年代に起きていて、その頃は援助交際などはまだなかっただろうから、この映画は舞台を現代に移しているんでしょう。それなのに、この映画は、異様なまでのリアリティがあります。ここまでリアリズムを追及し、またそれに成功している作品には、僕は出会ったことがありません。見る側に感動や主張を押し付けるような過剰なドラマ性は一切排除し、風景画のように子どもたちの生活を描いています。子どもたちの演技もとにかくリアルです。目線も、仕草も、セリフも、ほとんど素に見えます。ここまでリアルな演技を引き出した監督の手腕はすごいなあと思いますね。

 映像も素晴らしいです。「母親が戻ってくる」というかりそめの希望がだんだんと絶望感に変わってくる子どもたちの表情の変化、それに伴って荒れていく子どもたちの生活する部屋の様子を丁寧に撮っています。また、部屋の外の世界の映像には一種の爽やかさも感じられ、この映画に澄んだ空気を与えてくれます。アポロチョコ、カップヌードル、おもちゃのピアノ、マニキュア、キュッキュッと音が鳴るサンダル、粘土、花の種などのこの映画に登場する様々なアイテムは、普通にどこにでも目にするものなんですが、一つ一つが生々しく映し出されています。
 
 そこまでリアリティがある作品だからこそ、母親に見捨てられるという不安がだんだんと大きくなっていき、心がおびえ不安定になりながらも、日々力強く生き抜こうとする子どもたちの様子を1シーン1シーン見るたびに胸が締め付けられていきます。僕が一番心に残ったシーンは、明はゲームセンターで出来た友人達を、生活費の一部でゲーム機を購入してそれを餌に家に呼んでまでつなぎとめておくんですが、万引きが出来なかったばかりにそいつらから見放され、明に聞こえるか聞こえないかの距離で「あいつの家、臭いんだよ」と言われるまでになり、結局友達の縁が切れてしまいます。しかしある日椅子から落ちた妹のゆきのために、明は湿布薬を万引きして、全速力で駈けて来て、ゆきを助けようとするんです。僕の頭の中には、「明はこんなにすさんだ生活の中でも良心や信念は失わずにしっかりと持っていて、それに従って自分の頭で考え動ける素晴らしい人間だ。」という思いと、「近所の大人でもコンビニの兄ちゃんでも誰でもいいから助けを求めろよ!っていうかまず救急車を呼べよ!お前はどこまで強情な人間なんだ。」という思いが交錯し、非常にもどかしい気持ちで胸がいっぱいになり、とてもしんどかったですね。

 というわけで素晴らしい映画なのは間違いないんですが、1つだけ許せないところがあって、それが僕のこの映画に対する評価を大きく下げているんですね。それは、監督が母親の責任を棚上げしてしまっていることです。僕はYOU演じる母親が明に言った「あたしが幸せになっちゃいけないの?」というセリフに本当にキレそうになりましたから。こいつに加害者意識はないんでしょう。しかし、子どもたちは間違いなくこいつの「幸せ」の犠牲になった被害者です。しかしこの映画では子どもたちを被害者として描くのではなく前向きに力強く生きているように描くことによって、加害者側の責任も曖昧にし、特に非難するような描写もありません。実際に悲惨な結末に終わった事件を題材にしているのに、監督もここを逃げたらいかんだろと思いますね。だから僕はこの映画が好きになれないんです。点数は★6です。
さすがにこの出来でこれ以上低い点数はつけれないです。

 僕の同僚には小さな子供がいる人が何人もいます。そいつらはやれ子どもが熱出しただの入園式だの参観日だのでしょっちゅう休んだり早退したり遅刻したりするし、子どもの世話をせなあかんとか迎えに行かなあかんという理由で僕も当然行きたくない職場の飲み会をさも当然のように断ります。僕は「お前が自分の好きで作ったガキのために何でオレの仕事が増えんねん!」とか思いながらいつも苦々しく見ているので、たまに自分は子ども嫌いかなと思ったりもするのですが、この映画のように戸籍が無いので予防接種も受けられず、学校にも行けず、病気や怪我の時も病院に行けない状況でも何とか無事に育ってきたのに、挙句の果てに親もいなくなるというところまで追い詰められた子どもたちを見てると、本当に切なくなってきます。だからこそ、せめてラストは「誰も知らない」世界の「継続」ではなく「突破」という形にしてほしかったですね。このラストでは何の希望も持てませんからね。




<誰も知らない 解説>

 主演の柳楽優弥が史上最年少の14歳という若さで、2004年度カンヌ国際映画祭主演男優賞に輝いた話題作。『ディスタンス』の是枝裕和監督が実際に起きた、母親が父親の違う子供4人を置き去りにするという衝撃的な事件を元に構想から15年、満を持して映像となった。女優初挑戦の、YOU扮する奔放な母親と子役達の自然な演技も秀逸。母の失踪後一人で弟妹達の面倒をみる長男の姿は、家族や社会のあり方を問いかける。

 けい子(YOU)は引っ越しの際、子供は12歳の長男の明(柳楽優弥)だけだと嘘をつく。実際子供は4人いて、彼らは全員学校に通ったこともなく、アパートの部屋で母親の帰りを待って暮らしていたが…。  

1月の映画


 僕が映画を見るペースはだいたい週に3、4本なので、毎日映画の感想を書いていると、絶対にいつかネタ切れになります。
 だから、1、3、5、8、10、12月という31日ある月だけ映画の感想を書きます(7月は除く)。
 そして、その月の1~30日は普通に映画の感想なのですが、31日はその月の映画のまとめみたいなものにします。ちなみに12月31日は、その年の映画のまとめも加えます。
 まとめの内容とは、その月に感想を書いた30本のうちからベスト10を選び、12月31日には180本のうちからベスト50を選びます。また、毎月目立った映画人、映画をノミネートし、年末にはその中から選考委員1名で賞を決めます。
 毎回感想を書くごとに点数をつけているので、ランキングは基本的にはその時つけた点数の高いもん順に並ぶので、問題となるのは同じ点数をつけた映画の順序のみという本当にしょうもないものですし、賞も演技の評価なんて見る人によってかなり変わってくると思いますし、本当に独断と偏見で決まる何の価値もないものですが、やってみることにします。
 また、賞についてですが、実際のアカデミー賞は衣装デザイン賞とか視覚効果賞とか録音賞とか他にも色々賞があったと思いますが、たくさんあってめんどくさいしどういう基準で選んでいいのかさっぱりわからないので、主要6部門と脚本賞だけにします。  



ヤスオー・ムービー・ランキング(1月)

 1 パイレーツ・オブ・カリビアン
 2 ジョゼと虎と魚たち
 3 リリイ・シュシュのすべて
 4 オールド・ボーイ
 5 クラッシュ
 6 カッコーの巣の上で
 7 ジョー・ブラックによろしく
 8 亀は意外と速く泳ぐ  
 9 モンスターズ・インク
10 千と千尋の神隠し

  

 この10本を見ていくと、1位から3位の映画はほとんど差がないですね。ただ後味の悪い映画が下になっているような気がします。
 僕は邦画よりも洋画が断然好きと自分では思っていましたが、こうしてランキングを見ると差はないですね。日本の映画界も捨てたもんではないです。アニメも日本のものとアメリカのものが1つずつ入っているし、韓国映画も入っているし、なかなかバランスのいいランキングではないでしょうか。



ヤスオー・ムービー・アワード

◇作品賞ノミネート
「パイレーツ・オブ・カリビアン」
「モンスターズ・インク」

◇監督賞ノミネート
岩 井  俊 二 (リリイ・シュシュのすべて)
デヴィッド・フィンチャー 
(ファイト・クラブ) 

◇主演男優賞ノミネート
ジャック・ニコルソン (カッコーの巣の上で)
ジョニー・デップ 
(パイレーツ・オブ・カリビアン) 

◇主演女優賞ノミネート
池 脇  千 鶴 
(ジョゼと虎と魚たち)
ソーラ・バーチ 
(ゴーストワールド)

◇助演男優賞ノミネート
大 杉  漣 (ソナチネ)
スティーヴ・ブシェミ 
(ゴーストワールド

◇助演女優賞ノミネート
田 畑  智 子 (血と骨)
タンディ・ニュートン 
(クラッシュ)

◇脚本賞ノミネート
「オールド・ボーイ」
「クラッシュ」

 アカデミー賞を実際に獲得している作品や俳優は、何の考えもなしに選んでると思われるのでできれば避けたかったんですが、「カッコーの巣の上で」のジャック・ニコルソンの演技や「クラッシュ」の脚本は、選ばな仕方ないぐらいの出来ですね。
 今回これ以外で入れるかどうか悩んだものといえば、主演女優賞部門での「アザーズ」のニコール・キッドマンや、作品部門での「ターミネーター」ですね。惜しいところです。
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