どっちかといえば松本人志が好きな人。
青春の王道を描くことにこだわったからこそ成功した映画
監督/大林宣彦
出演/林泰文、柴山智加、岸部一徳
(1992年・日)
1965年の香川県の観音寺市でバンドを組んだ高校生4人の青春を描いた話です。4人は夏休みにアルバイトでお金を稼ぎ楽器を購入、バンド名を「ロッキング・ホースメン」とします。河原での合宿を行い、学内での活動も認められ、スナックの開店記念パーティで念願のデビューを果たします。
この映画は嫁はんは大絶賛していましたし、世間の評価も悪くはなさそうです。しかし僕は冒頭の主人公の「ロック、ロック、ロック・・・」というナレーションを聞いただけで、この映画のノリは自分には合わないなと感じました。途中で何回か主人公がカメラ目線で映画を見てる人たちに話しかけるシーンがあるのですが、こういう演出も全然好きじゃないですし。
しかし、そういうノリは好きじゃないですが、決して悪い映画ではないと思いました。嫁はともかく世間の目は確かです。尺が2時間以上とかなり長いんですが、退屈せずに見れたのがその証拠です。それどころかこの映画ならもうちょっと見続けていても苦じゃないなあとまで思いましたからね。非常に居心地のよい空気を醸し出している映画だと思います。
徹底的に現実感がないところがいいんでしょうね。この映画の主人公達ほどのん気な若者に僕は出会ったことがありませんし、周りの大人達もみんないい人すぎます。いくら田舎とはいえこんなのどかでいい人ばかりの町はどこにもないでしょう。しかし、この映画はこれでいいのかなとも思います。青春の王道をとことん愚直に描いたので、うそ臭さよりも爽やかさが勝りましたね。
僕が監督なら、はじめの1時間はこういう感じに徹底的に爽やかに描いて、あとは大人になって落ちぶれた主人公達を1時間半撮りますね。経済的には1人ぐらいは成功させますが、そいつはかなり性格が悪くなっていて、他の奴らは夢はあるが経済的には貧しい設定がいいでしょう。そして大人になった4人の人間関係のギクシャクを描きます。まあ、そういう展開にしなかったからこそ、この映画は良かったんでしょう。
ただ、僕は自分が中高一貫の進学校に通い、バイトも禁止で、文化祭もなく、男子校で学校に女の子もいず、まさに灰色の青春を送ったので、やはりこういう爽やかな青春映画よりも「リリィ・シュシュのすべて」のような作品を好きになってしまいます。いくら面白い映画でも登場人物に感情移入できないというのは辛いですね。この映画の主人公達には、「お前らは親も教師も理解があって好きなことができてええのう。」という妬みの感情しか持てませんから。
だから点数は★5としときましょう。出来は悪くはないし面白いけど好きにはなれないので、非常に中途半端な点数になりました。
大森嘉之演じる寺の坊主のキャラは良かったですね。この映画に出るすべての登場人物の中で、こいつだけはちょっと好きです。演じる大森嘉之も良かったと思います。
<青春デンデケデケデケ 解説>
1960年代中頃の四国の田舎町を舞台に、ベンチャーズに憧れ、ロックバンドに情熱を燃やす高校生たちの姿を軽妙でノスタルジックに描いた青春ドラマ。直木賞を受賞した芦原すなおの同名小説を、「転校生」「さびしんぼう」の大林宣彦監督が映画化。1965年の春休み。四国・香川県の観音寺市。高校入学を目前に控えた藤原竹良は、昼寝中にラジオから流れてきたベンチャーズの「パイプライン」に衝撃を受け、高校に入るや仲間を集めてロックバンドを結成する……。