どっちかといえば松本人志が好きな人。
深呼吸の必要
見ていて心地よい癒し系の映画です。
監督/篠原哲雄
出演/香里奈、谷原章介、成宮寛貴
(2004年・日本)
都会の生活でさまざまな傷を抱えた若者達が、沖縄でさとうきびを刈るバイトをします。はじめは慣れない作業にとまどい、仲間内でもいざこざを起こしていた若者達が、沖縄の美しい自然の中で働いているうちに、少しずつ変わっていく話です。
決して若者達の心身の成長を描いている映画ではありません。若者達が何らかのものを背負ってこのバイトに参加しているのは何となく分かります。どう考えてもこんなバイトはしないであろう派手な外見の女性や、どう考えてもバイトそのものをしないであろう極端に無口で人見知りの女性もいますから。しかし、そういう若者達の心の傷のようなものはほとんど描くことなく、壮大なサトウキビ畑で、若者達がひたすらさとうきびを刈っているシーンが延々と続きます。
こんな風に言うと退屈な映画のようですが、そうでもないんですよ。たしかに静かな映画なんですが、終わる時間が気にならない、いつまでも見ていたい映画です。
若者達の、身体をフルに使ってがんばって働いて、雇い主であるいつも温かく接してくれる老夫婦の家でご飯をみんなで一緒に食べて、寝て、また朝早く起きて働きに行く、という生活が淡々と描かれているだけなんですが、その生活が確かに彼らの心の傷を癒しているのが、具体的な描写が無くともはっきりとこちらに伝わってくるから、こちらも何か癒されていくような感じになり、見ていて心地よいんですね。
タイトル通りなんですが、「都会の生活はせちがらいけれども、あんまりつまらないことをあれこれ考えず、ちょっと深呼吸をしてみるぐらい、心に余裕を持って生きたらいいよ。」というテーマの、いわゆる癒し系の映画ですね。
僕は、「ユージュアル・サスペクツ」のような、ラストまでの展開に伏線がびっしり張られていて、ラストにそれらがすべて集約されどんでん返しがあるような脚本こそが、良い脚本だと思っていたんですが、この映画のように、「ユージュアル・サスペクツ」とはまったく正反対のオーソドックスで盛り上がるシーンがまったくない脚本でも、これはこれでリラックスして心地よく見ることが出来る良い脚本だなと思いました。
まあ、実際は沖縄もここまでのんびりした所ではないだろうし、この映画の老夫婦のような絵に描いたような善人もいないんでしょうけど、この映画の若者達のように都会の生活に疲れ、傷つき、悩んでいる人は、僕を含め実際に多いでしょうから、こういう映画の存在は貴重だと思いますよ。評価は★7とします。
この映画は、谷原章介、成宮寛貴、長澤まさみ、大森南朋と今かなり人気がある俳優、女優がけっこう出ていて、そういう人たちの昔の演技を見れるところもいいと思いますよ。しかし、主人公のちなみ役を演じる香里奈は演技が下手でした。あんまりセリフも多くないのにここまで下手ということは、相当下手なんだと思いますよ。顔は可愛いしスタイルもいいから素材は良いんですけどね。
<深呼吸の必要 解説>
『はつ恋』や『昭和歌謡大全集』などの篠原哲雄監督が、次代を担う有望な若手俳優7人を一同に集めて撮った、心温まる青春群像劇。本作でデビューを飾り、篠原監督の次回作『天国の本屋~恋火』にも出演している、香里奈の瑞々しい魅力や、『あずみ』の熱演も記憶に新しい、成宮寛貴らの自然体の演技に癒される。都会から来た軟弱な若者達が沖縄の大自然と向き合い、島の人々の温かさに触れ、成長して行く姿が頼もしい。派遣社員のひなみ(香里奈)や大学生の大輔(成宮寛貴)らは、さとうきび収穫時のアルバイト“きび刈り隊”に応募し、沖縄にやって来た。彼らは寝食を共にしながら、約7万本のきびを刈る作業に従事する。