どっちかといえば松本人志が好きな人。
リリイ・シュシュのすべて
完全に好みが分かれる映画ですが、僕は好きです。
監督/岩井俊二
出演/市原隼人、忍成修吾、蒼井優
(2001年・日)
この映画の主人公である蓮見雄一は、同じクラスの優等生の星野修介と仲良くなります。しかし、蓮見を含む友人達との沖縄旅行で何かが変わった星野は、いじめっ子になり、蓮見もイジメのターゲットになります。蓮見が唯一心を開けるのは、彼が主催するカリスマ的歌姫リリイ・シュシュを応援するサイト「リリフィリア」での中だけでした。そんな彼が、サイトに来た「青猫」と名乗るリリイファンと知り合い、心を通わせていく、といった話です。
この映画は満点ですね。正月に満点を出したとこなので、当分は満点はつけたくなかったのですが、ちょっと見る順番を間違えましたね。僕が今まで見た映画の中でも10位ぐらいには入るので、満点以外つけれないです。それぐらい気に入りましたね。
まず映像が素晴らしい。特に変わった所で撮ってるわけではなさそうなので、撮り方が上手いんでしょう。僕は今までそんなに映画を見てきたわけではないんですが、こんなに映像が美しい映画はちょっと記憶にないです。たとえ内容がつまらなくても、この映画を見て良かったと思うぐらいの出来です。音楽も独特の雰囲気があっていいですよ。さすが売れっ子プロデューサーの小林武史が手がけているだけありますね。重低音のリリイ・シュシュのサウンドはかなりインパクトがあって、映画が終わった後も頭から消えないですから。
そして、内容も文句なしです。紛れもない傑作ですね。自分が中学生ぐらいの頃を思い返すと、さすがにこの映画に描かれてるほどひどい経験はしてないんですが、それでもやっぱり辛いことばっかりだったし、毎日鬱屈した気持ちで一杯で、かといって世の中の嘘も見えてくる頃だから将来に希望もないし、何をやっても空しいだけでした。この映画の蓮見や星野のように、僕もこの頃は大きな衝動を溜め込んでいたし、仮想現実にも逃げていました。この映画は全体的に青春の青臭さが漂っているので、どうしても自分の記憶と結びつけながら見てしまいます。そうするとこの映画の内容はかなり心の琴線に触れてくるんですね。
しかし、僕は小学校の頃から神経性胃炎に悩まされていたぐらいに、かなり人より神経質で傷つきやすい性質なので、普通の人と比べたらかなり心が脆すぎる蓮見や星野にも感情移入できるし、この映画の繊細な表現も自分に合うから理解できるけれども、僕よりは図太い普通の人で、僕よりはマシな青春時代を送ってた人がこの映画を見たらどうなんでしょうかね。イジメとか援助交際とかレイプなんぞは、ワイドショーなどで大人が今どきの子どもを語るうえでありきたりの題材ですし、ただの過激で極端な表現の映画に見えて、絶望感を抱いて気分が重たくなるだけではないでしょうか。
そういう意味で、完全に好みが分かれる映画だと思いますよ。僕の偏見ですけど、この映画を良いと思う人のほとんどが、今までけっこう暗い人生を送ってきた人なんじゃないかと思いますね。だからこの映画をけなす人がいるのは当たり前だと思うし、こんな映画をみんなが褒める世の中は逆に不健康で良くないとも思いますね。
だから、僕はこの映画はむちゃくちゃ好きですが、それは好みによるところが大きいと思いますから、決していい映画だと人に薦めることはないですね。ちなみにこの映画は、作品全体の美しく陰のある感じといい、ストーリーの救いのなさといい、ちょっと野島伸司作品に似ているんですが、僕は野島伸司はTVドラマの脚本家の中でダントツで好きですし。
しかし、この映画は、クラスのマドンナ的存在である久野陽子役のキャスティングだけはもうちょっと考えてほしかった。この役を演じていた女優は同じ監督の映画で「スワロウテイル」にも出ていて、今までその作品でしか見たことがないし、100%監督のお気に入りなんでしょうが、どう見ても中学生には見えません。だからレイプシーンはしょうもないAVみたいです。ちなみに客観的に見てそんなに可愛くもないので、マドンナ役というのも無理があります。他の主役級の市原隼人、忍成修吾、蒼井優あたりが頑張っていただけに、よけい惜しかったですね。
<リリイ・シュシュのすべて 解説>
ウェブサイト上展開されたインターネット・インタラクティブ小説から生まれた衝撃の問題作。「スワロウテイル」の岩井俊二監督が、14歳の少年少女たちの心の闇、焦燥、痛みを鮮烈に描き出す。中学生になった蓮見雄一は同じクラスの優等生・星野修介と仲良くなる。夏休み、2人はほかの仲間たちと西表島へ旅行に行く。しかし、旅行から戻った星野は変質し、番長を倒し自らその座に収まり、蓮見はいじめの対象になっていく……。