どっちかといえば松本人志が好きな人。
ファイト・クラブ
僕はこの映画の暴力描写は不愉快ではなかったです。
監督/デビッド・フィンチャー
出演/エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、
ヘレナ・ボナム=カーター
(1999年・米)
この映画は、重病患者の会に出席したり、高級な家具を買ったりすることで心の慰めを得ている、不眠症の青年ジャックが主人公です。ある日彼は、顔もハンサムで、腕力もたっぷりありそうで、タイラーというワルっぽい青年と知り合います。タイラーに巻き込まれケンカの秘密クラブを設立したジャックは、殴り合いという行為を通して自分の悩みを忘れていきますが、その頃からタイラーに不穏な動きが見え始めます。
僕は、常々社会がつまらないと感じているし、物を買ったりしてストレスを解消するし、自分より不幸な人の話を聞くとどこかほっとしてしまうし、不眠症であるので、まるでジャックのような青年です。だからジャックのタイラーのようになりたいという気持ちは分かります。総合格闘技が人気があるように、男という生き物は、官僚や学者や将棋の棋士などの頭の良い男より、腕っぷしの強い男を素直に賞賛しますからね。
それは本能的なものなんでしょうね。ジャックが殴り合いによってリアルに生きていることへの手ごたえを見つけるように、もしかすると僕もこういうクラブに入ったら自分のアイデンティティーを確立させることが出来るかもしれないとちょっと思ってしまいます。
だから、暴力がダメなのは頭で分かっているんですが、ストーリーが全然嘘っぽく見えなくて、なかなか面白かったですね。2時間を超えるけっこう長い映画なんですが、テンポもいいですし、ストーリーも二転三転してハラハラするし、最後まで退屈しませんでした。
この映画の監督は「ゲーム」の監督ですね。「ゲーム」と同じようにこの映画にもどんでん返しがあります。僕は「ゲーム」のオチにはかなり怒りを覚えたんですが、この映画はありきたりなどんでん返しのオチだけれども、まあそんなもんだろなと納得はできた。だから、あまり難しいことを考えずに、普通に娯楽映画として見たら、この映画は十分楽しめると思いますよ。
それでも、この映画はかなり批判されるでしょうね。それは監督も作る前から分かっていると思いますけど。しかし僕には、この監督が話題作りのために暴力や狂気をあえて過激に描いてるようには見えませんからね。実際に人が死ぬシーンは少ないですし。だから僕は暴力描写とかは全然不愉快ではありませんでした。
終盤でこのクラブは破壊衝動が強くなりすぎて、社会に矛先を向けるようになり、テロ行為を行う危険な宗教団体のようになります。このあたりの終盤の展開の強引さは僕はちょっとついていけなかったですし、そうなった理由も一応語られているんですがイマイチ納得できませんでした。まあしかし、この監督が暴力は何も残さない、無意味なものなんだよときちんと言っているのは間違いないと思います。
評価は中の上として、★7ぐらいにしときます。この映画はサブリミナルっぽいからくりがあるようなんですが、そんなことをする意味があまり分からなかったことと、主演のエドワード・ノートンが僕があまり好きじゃないことから、ちょっと点を下げています。
<ファイト・クラブ 解説>
空虚な生活を送るヤング・エグゼクティブのジャックは、謎の男テイラーに導かれるまま、謎の秘密組織「ファイト・クラブ」のメンバーになる。そこは鍛え抜かれた男達が己の拳のみを武器に闘いを繰り広げる、壮絶で危険な空間だった。血飛沫が飛び散る拳闘シーンの迫力もさる事ながら、圧倒的な印象を残すのは「セブン」のデヴィッド・フィンチャー監督による暴力的ともいえる映像の洪水。世紀末のカオスをまさに”体感“できる一作だ。