どっちかといえば松本人志が好きな人。
夜のピクニック
原作もつまらんし、映画としてもまるでダメです。
監督/長澤雅彦
出演/多部未華子、石田卓也、郭智博
(2006年・日)
主人公達の高校で昔から行われている伝統行事「歩行祭」の様子を描いた話です。主人公の甲田貴子はこの行事をきっかけに、普段は気まずくて一度も話したことのない同じ学年にいる異母兄弟の西脇融に話し掛けようという思いを抱いていました。
この映画の主人公の貴子と西脇は異母兄弟なんですが、このことはそんなに重たく受け止めなければならない事実なんでしょうかね。僕だったら異母兄弟がいても「まあ、世の中こういうこともあるだろう。」とさらりと受け流すと思うんですけどね。そりゃ多少はそいつとは気まずいけれども、少なくともこの映画の二人のように、まったく口もきかないほど相手を強く意識する関係にはならないですよ。愛人の子は汚らわしいとかまったく思わないですし、僕だったらどちらの立場でも負い目や罪の意識、相手に対する憎しみなんかはまったくもたないと断言できます。
そういうわけでこの映画は間違いなく貴子と西脇の関係がメインのストーリーなのに、二人にまったく感情移入できないから、最初から最後まで見てて何も面白くなかったですね。「ふーん。こんなしょうもないことを延々と描いた映画なんだな。」という感想しかありませんでした。
貴子と西脇以外のクラスメイトも典型的なステレオタイプの人間ばかりですからね。恋愛のことしか考えていない内堀、ちょっと大人びたイイ奴キャラの戸田、マンガチックなノリの梨香、柄本明の息子が演じるお調子者の高見、全員薄っぺらいキャラばかりでまったく好きになれないです。高見と内堀が意気投合するベタベタな展開なんかは、「一生やっとけ!ボケ!」と思いましたね。特に高見については、「コイツを演じてる柄本明の息子は、こんなブサイクなツラして何で若い頃からそれなりに売れとるんや。本人はオーディションとかで合格するのは自分の演技力のたまものやと思とるんやろな~。120%親の力やのに。」と見ててまったく映画に関係ないことまで考えてしまうので、一番ウザかったです。
まあ、こんなにつまらない映画だということは、原作もつまらんのでしょうね。原作は全国の書店員が選ぶという本屋大賞という賞を受賞したらしいのですが、この映画を見て本屋大賞という賞が実にしょうもない賞だということがわかって勉強になりました。全国の書店員が選ぶといったって、本当に全国の店員全員にアンケートをとったわけではないでしょう。それにみんなが同じ数の同じ本を読まないとこんなアンケートは意味ないですしね。雑誌などの読者が選ぶ映画ランキングでも上位はベタなハリウッド大作ばかりですし。
もちろん、この映画は映画としてもまるでダメですよ。たまにこういうメリハリのないもっちゃりとした感じの映画に当たってしまうんですが、原因は監督に映画を作る才能がないからですね。場面場面をうまいこと繋げたり、ある場面を盛り上げていわゆる見せ場を作るといったことができないんです。僕はこの映画の主人公の2人に感情移入できないと先ほど言いましたが、2人の関係の見せ方を工夫したらちょっとは面白くなるはずなんです。しかしこの監督はあまりにも見せ方に芸がない。素人以下ですね。僕はこの監督の作品は初めて見ましたが、もう2度と見ません。
この映画は★1ですね。この1点の源である僕がこの映画で唯一いいなと思ったところは、貴子が普段は同じクラスの友達と仲良さそうに歩いているのに、休憩時間になるとちゃっかりもっと仲良い他のクラスの女の子のところに行くところですね。人の情の薄さにグッときましたよ。それ以外のところでは登場人物達はクサいセリフや行動に終始するので、このシーンが逆に新鮮でした。
この映画で貴子を演じている多部未華子はけっこう有名なので期待していたんですが、演技は全然上手くないですね。「目つきが悪いなあ。」という印象しか抱きませんでした。あの目つきで思春期特有の複雑な感情を表現したいんでしょうが、「表現したいんだろうなあ。」ということしか伝わってきませんでした。容姿もそんなに良くないですし、こういう女優を「存在感がある。」とか根拠のない理由でもてはやしたらダメです。石田卓也もただの愛想の悪い表情の無い男に見えました。まあ、これぐらいキャリアの浅い役者の演技のダメさは監督の稚拙な演技指導のせいも多分にありますけど。ちょっとは「誰も知らない」の是枝監督を見習ってほしいですね。
<夜のピクニック 解説>
全国の書店員が選ぶ第2回本屋大賞を受賞した、恩田陸の同名ベストセラー小説を映画化した青春ドラマ。24時間かけて80キロを歩く学校行事を通し、高校生の友情や葛藤を描いたのは、『ココニイルコト』『青空のゆくえ』の長澤雅彦監督。出演は『HINOKIO ヒノキオ』の多部未華子、『蝉しぐれ』の石田卓也、『花とアリス』の郭智博など、期待の若手俳優たちが顔をそろえた。ひたすら歩き続ける中で自分と向き合い、成長していく彼らの姿が清々しい。
高校生活最後の伝統行事「歩行祭」を迎える甲田貴子(多部未華子)は、一度も話したことのないクラスメイト西脇融(石田卓也)に話しかけようと考えていた。2人は異母兄妹の間柄で、そのことは誰にもいえない秘密だった。一方、融も貴子を意識しながらも近づくことができず、事情を知らない友人たちが勘違いして、告白するようけしかける。