どっちかといえば松本人志が好きな人。
ブレイブ ストーリー
主人公達の安い絆と最後のワタルの決断が結びつかない
監督/千明孝一
声の出演/松たか子、大泉洋、常磐貴子
(2006年・日)
主人公のワタルは一般家庭に生まれた平凡な少年ですが、ある日、父親が家を出て行き、母親はそのショックで倒れてしまいます。自分の不幸な運命が嫌になったワタルは、運命を変えるため、異世界への扉を開きます。同じようにその扉を開いた少年がもう1人います。それは転校生のミツルでした。
この映画がダメな映画であることは言うまでもないと思います。こんな典型的なハズレ映画に当たって時間をムダにして、僕が運命の扉を開けたいぐらいです。ジブリの映画でよくあるような幻想世界の話ですね。フジテレビの人たちはこの映画の原作を見つけて、「よしこれだ!これならジブリ並みに当たるだろう!」と思ったんでしょう。そういう思いだけはひしひしと伝わってきます。
予期せぬ出会いと不思議な世界というのはストーリーを描くうえではかっこうの題材ですが、この映画を作った人たちには物語をはぐくもうという気はまるでないんでしょう。この映画のプロデューサーである亀山千広の育ったテレビの世界は数字とってナンボですからね。こんなに作品として成り立っていない映画でも、宣伝をバカスカやって客さえ入ればそれでいいと思ったから世に出したのでしょう。あからさまに客寄せな声優陣の顔ぶれと、主人公のワタルよりも絵的にも人物的にも丁寧に描かれているミツルという美少年キャラがその証拠です。
物語として成立していないので、きちんと最初から見てもラストのワタルの決断はまるっきり理解できませんでした。「何やお前現世の自分の運命があまりにも過酷すぎて耐えられへんからこの世界に来たんちゃうんかい。何でそないなこと言うねん。ただ単にきれいなラストにして見てる俺らを感動させたいだけかい。お前はこの映画のプロデューサーか!」とちょっとブチ切れたぐらいです。
ワタルが「幻世」をむちゃくちゃにして自分だけ幸せになる結末だったら僕はこの映画に★6はつけるんですけどね。登場人物たちの心のつながりや主人公の精神的な成長がほとんど描かれていないんですから、その結末が自然でしょう。唯一描かれているっぽいところが途中挿入歌が流れるシーンですが、しょせん歌一曲分の尺です。この映画の主人公達はかなり薄っぺらい絆でつながっていますね。
彼らが一応は絆を深めているような絵が紙芝居のように続けざまに出てきますが、こんな予告編みたいなのを見せられてもげんなりするだけです。挿入歌も気が抜けるような歌ですからね。「Aqua Timez」という「19」と「175Rを足して2で割ったようなバンドの歌ですが、純粋に歌が下手だし、歌詞も中学生にはギリギリ通用するかなというレベルです。
まあ、「他人を犠牲にしてまで自分の欲しいものを手に入れてはならない」ということを子どもに教えるのには多少は効果があるんじゃないでしょうか。僕も勇者の剣にはめる5つの宝石をワタルが簡単に集めるさまを見ていて、ここまで順調に物事が運ぶ人間だったら他人を犠牲にしてはいけないなあ、と思いました。
この映画の点数は★2ぐらいですかね。さすが日本のアニメの絵のレベルはすごいです。こんな最低なストーリーの映画でも僕が★2もつけるぐらいですから。実写映画だったら間違いなく★0です。
<ブレイブ ストーリー 解説>
宮部みゆきのベストセラー小説をアニメ映画化した冒険ファンタジー。不幸のどん底に突き落とされた少年ワタルが、運命を変えるために飛び込んだ異世界での冒険を描く。TVシリーズ『青の6号』などで知られる日本最先端の映像制作スタジオ、GONZOが映像を手掛ける。主人公・ワタルの声を務めるのは女優・松たか子。そのほか、大泉洋、常盤貴子といった豪華な顔ぶれが声優として参加している。広大なファンタジーの世界と、ストーリーに内包される普遍的なメッセージが心を引く。
どこにでもいる平凡な小学5年生のワタルは、父親の家出と母親の自殺未遂を機に不幸のどん底に突き落とされてしまう。あまりにもつらい自分の運命を変えたい気持ちに駆られたワタルは、転校生のミツルに教えてもらった“運命を変える扉”を開け、ありとあらゆる冒険が待つ幻界へ飛び込むが……。