どっちかといえば松本人志が好きな人。
雲のむこう、約束の場所
この監督にはこういうSFチックな映画は向いていない。
監督/新海誠
声の出演/吉岡秀隆、萩原聖人、南里侑香
(2004年・日)
戦後、日本は南北に分断され、藤沢ヒロキと白川タクヤは米軍統治下の青森で暮らしていました。ユニオン占領下の北海道には、謎の巨大な塔が建っていました。ヒロキとタクヤはいつかこの塔まで飛んでいこうと、2人で飛行機を組み立てていました。
この映画も新海誠という監督が前作の「ほしのこえ」と同じく、原作・脚本・監督・撮影・美術といろいろがんばっています。たしかこの監督の前作の「ほしのこえ」は、ほとんど1人で映画を作ったということに意味があるということで、ストーリーがイマイチでも僕はこのブログで★4をつけたと思います。しかし今回は1人で作ったということにあまり意味はないです。「ほしのこえ」がそこそこヒットして名声を得て、間違いなく製作費は前作より増えていると思いますからね。吉岡秀隆や萩原聖人を声優に使っているぐらいですし。この段階で色々な仕事を1人で頑張っても、ただのナルシストにしか見えません。どんな仕事でもそうですが、「他人を信頼して仕事を任せる」ということも大事なことですからね。
映画の雰囲気は前作とそんなに変わっていません。相変わらず登場人物は少ないですし、おそろしく小さな世界での出来事のように見えます。前作と違って今回の映画は背景となる世界自体もそれなりに描こうとしているのはわかるし、登場人物も多少は増えているんですが、主人公達は過去の自分達の美しい思い出にひたっていばかりで、まったく現実世界に溶け込んでいません。いつまでも思春期の少年少女のような彼らと、世界の終わりがどうたらこうたらというSFチックな世界がどうにも結びついてこないです。
見てるこっちは中高一貫の男子校におって爽やかな青春時代の思い出などまるでない30の仕事に疲れたオッサンですからね。そりゃきついですよ。「もうええでそんなん、おまえはいつまで子どもやねん。いいかげん現実を見つめろ!」とずっと怒っていましたね。背景となる世界観やストーリー展開のリアリティのなさはつっこむつもりはありませんが、こんなジュブナイル小説の登場人物のようなキャラクターだけは許せなかったですね。
ヒロインも前作の「ほしのこえ」と同じく、心に汚い部分のまったくない、男から見たらまさに理想の女性です。ちょっとオタクっぽい映画に出てくる女の子はこうでないといけないという暗黙のルールがあるのでしょうか。もちろんそういう男寄りの女性の描き方を完全に否定するわけではないですが、そんな女の子が出てくる映画は万人に受け入れる作品には決してなりえないですね。たぶん女が見たら怒ると思いますから。
新海誠が才能がないわけではないんですよ。今回の映画もSFチックな設定でなく本当に日常生活の小さな一コマを描いただけだったら、僕の評価ももっと上がっていたと思います。「ほしのこえ」のDVDに入っていた「彼女と彼女の猫」という作品は僕の中では評価が高いですし。この人の作品は叙情性が高く見てて非常に爽やかな気分になります。そこに良さがあるのですから、戦争だの世界の終わりだの軍隊だのといった題材とは相容れないと思います。
絵は相変わらず美しいです。田舎の駅や草原のカットは本当に素晴らしかった。ただ、飛行機が飛ぶシーンとかの迫力はまるでなかったですね。「あれ、もう飛んだんや。」といった感じです。一般的なSFアドベンチャーだったらここが一番ストーリー的にも画的にも盛り上がるところなんですけどね。本当にこの人はこういう話に向いていません。
点数は★2とします。★4、★2とこの監督の映画の点数は僕のブログでは低迷気味ですが、僕はまだまだこの人を見捨ててはいません。違った題材の映画を撮るならばまた見ると思います。
<雲の向こう、約束の場所 解説>
フルデジタル作品『ほしのこえ』でデビューし、国内外から高い評価を得た新海誠監督が前作同様、原作・脚本・監督・撮影・美術を自らが手がけたアニメーション。日本が南北に分断され、青森が米軍の統治下に置かれるという設定で展開される青春物語。声優陣は吉岡秀隆をはじめ「冬のソナタ」でぺ・ヨンジュンの声を担当した萩原聖人など演技派ぞろい。空間の広がりを感じるアニメーションとオリジナリティあふれる設定に注目。
日本は戦争により南北に分断されていた。米軍の統治下にあった青森に住む藤沢ヒロキと白川タクヤには夢があった。それは津軽海峡を走る国境線の先にある巨大な塔まで、小型飛行機で飛ぶことだった。そんなある日、2人のあこがれていた沢渡サユリが突然転校することに……。