どっちかといえば松本人志が好きな人。
サイレン FORBIDDEN SIREN
それだけはやめてほしかったと思う残念な終わり方です。
監督/堤幸彦
出演/市川由衣、森本レオ、田中直樹
(2006年・日)
1976年に、全島民が消失するという未曾有の大事件が起きた「夜美島」という島に、病弱な弟の静養のためにフリーライターの父と家族3人で引っ越してきた由貴が主人公です。その島に到着した由貴達を見る島民達の視線は何ともいえない不快なものでした。そして、由貴の隣の家に住む怪しい女からは、「サイレンが鳴ったら外に出てはだめ。」という気になる忠告を受けます。それが、由貴が直面する恐怖の始まりでした。
この映画は、ストーリーというか最後がしっかりしていれば、たぶんいい映画だと思うんですね。この映画の最大のウリであろう音響という点では僕は映画館で見ていないので何とも言えないですが、それ以外の面でもこの人は見せ方、盛り上げ方が上手いなあと思いましたね。民家のたたずまいや謎の宗教施設など島全体が謎めいた独特の雰囲気を醸し出していて、映画の世界にじわじわと引き込まれていきます。全体の構成、テンポなんかもいいですから、中盤からヒロインにだんだんと迫って来る恐怖や、終盤の襲撃、逃亡のシーンなど、かなりの緊迫感と迫力がありました。
そういえば昔これと似たような映画を見たことがありました。洋画なんですが、デビッド・フィンチャー監督で、マイケル・ダグラス主演の「ゲーム」という作品です。この映画もスピード感があって、スリリングな展開で、最後の最後までハラハラドキドキさせるんですが、最後は「オイッ!」と思わず言ってしまうような終わり方です。しかし、落ち着いてよく考えてみると、「これはこれで大きな矛盾があるわけではないし、まあこういうのもありやな。『セブン』の後にこんな映画を作るなんで、さすがデビッド・フィンチャーだな」と思わずニヤけてしまうようなしてやられた感があって、決して悪い作品ではないです。しかし「サイレン」の方はそれだけはやめてほしかったという残念な気持ちだけが残るどうしようもなく陳腐な終わり方です。
ちなみに、オチの後の本当のクライマックスにまたどんでん返しみたいなものがあるんですが、それがどうでもいいと思えたぐらいこのオチで力が抜けましたね。それまで真剣に見ていた自分がアホに思えてきました。島民の奇妙な儀式、謎の赤い服の少女、人魚伝説、パソコンに残された映像などの数々の謎は、いったい何だったんだよということじゃないですか。すべてほったらかしですからね。このオチだと説明する必要もないのかもしれませんが。
このオチだとあまりにもあんまりなので、もしかすると僕は重大な解釈違いをしていたのかもしれない、この映画はもっと深い別の解釈ができるかもしれないと思い、色々見終わった後も考えましたよ。しかしどっちにしろこの映画は色々な謎についてあまりにも説明不足なので、あくまで想像の域は出ませんでした。
しかしこの映画は間違いなくオチが理由でしょうもない映画のレッテルを貼られていると思うし、そんなことは作り手側も想像つくはずです。それだったら、ゲームのストーリーをそのまま持ってきてくればいいと思うんですけどね。僕はゲームの方はまったくやったことないですし、どんな話かもまったく知らないですが、映画化されるほど人気が出たということは、間違いなくこんな終わり方の話じゃないと思いますし。
というわけで、この映画はラストにいくまではすごく面白かったんですけど、ラストがあまりにもダメなので、そこで評価がガクンと下がって★は3としときます。やっぱりラストがダメな映画は、どう考えても印象は良くないですね。
あと、森本レオとココリコ田中は演技力うんぬんというよりもホラー映画には出したらダメでしょう。この2人が何しようが全然怖くないですし。
<サイレン FORBIDDEN SIREN 解説>
国内外で大ヒットした同名ゲームを題材に「ケイゾク」「トリック」の堤幸彦が監督した新感覚スリラー。映画初主演の市川由衣が、29年前に謎の失踪事件が起きた島で怪現象に巻き込まれる少女役に体当たり演技で挑み、森本レオ、ココリコの田中直樹、阿部寛ら個性派キャストが脇を固める。物語の鍵を握るサイレンの“音の恐怖”に着目したほか、その謎を追う顛末で明らかになる「衝撃の3回転結末」など斬新な展開に圧倒させられる。
1976年、ある島で全島民が突如消失する事件が起きる。事件から29年後、その島に家族とともに引っ越してきた天本由貴(市川由衣)は、隣人(西田尚美)から“サイレンが鳴ったら外に出てはならない”との警告を受ける。