どっちかといえば松本人志が好きな人。
深紅
「火曜サスペンス劇場」レベルの、重みも深みもない映画
監督/月野木隆
出演/内山理名、水川あさみ、小日向文世
(2005年・日)
主人公の秋葉奏子は、修学旅行での宿泊先で、家族が事故に遭ったという知らせを聞きます。先生に連れられ急いでタクシーで病院に駆けつけたのですが、両親と弟2人はすでに死んでいました。実は彼らは、都築則夫という男に殺されたのです。秦子はそれ以来、宿泊先から病院までの4時間の追体験に襲われる後遺症に悩むことになります。そして、8年後、大学生になった奏子は、自分の身元を隠したまま、自分の家族を皆殺しにした都築の娘、未歩に近づいていきます。
全然面白くなかったですね。以前見た同じようなテーマの映画である「オールド・ボーイ」と比べて、ストーリーもイマイチだし、主演の役者の演技も「オールド・ボーイ」の主役のオッサンに比べれば全然だし、演出も安っぽいし、すべてにおいてスケールの小さい作品で、重みも深みもありません。「火曜サスペンス劇場」ぐらいのレベルですかね。
未歩の父である都築則夫についてはあまり突っ込んで描いておらず、主人公の女性2人の心情に的を絞って作っている映画です。しかしその2人、特に奏子からは、「加害者の娘」、「被害者の娘」として背負っているものの重さがあまり感じられませんでした。この映画は結局は過去を乗り越えるということがどういうことなのかを言いたいんでしょうが、2人の過去の重さが伝わってこず感情移入もできない僕には何の感動もありません。2人のキスシーンも、意味していることはストーリーの流れで分かるんですが、僕にとっては「何でそこまでするの。」といった感じです。
それまでの話の展開も面白くなかったですね。奏子は、自分の家族を殺した男の娘である未歩を当然憎んでいます。しかし、奏子と未歩はその事件により人生を狂わされたという共通の過去を持っており、2人にしか理解できないものがあるのです。奏子はそういう複雑な感情のもと、未歩を許すのか憎み続けるのか、どちらを選択するのか、といったことを描いているんですが、僕は正直どっちでもええわと思いました。だいたい奏子の復讐計画がつまらないですからね。未歩がダンナにDVを受けていて苦しんでいるので、未歩にその夫を殺してみればと提案するんです。おいおいその程度かよと思いましたよ。
あと、配役についてですが、小学生時代の奏子の役を堀北真希がやったらいかんでしょう。修学旅行中という設定なのでランドセルを背負うシーンがなかっただけでもよかったんですが、いくら何でも小学生には見えません。おまけに、この子が8年たったら内山理名になるというのはいくらなんでも無理やりすぎです。無名でもいいから、もうちょっと内山理名に似た子役を連れてくればいいじゃないですか。事務所の意向みたいなのが見え隠れしていて嫌な感じがしました。都築則夫役の緒方直人も、おそらくこの役で新境地を開きたかったのでしょうが、僕には役に合ってないなという印象しかありませんでした。先生役の南野陽子は、どういうキャラを演じたいのかよく分かりませんでした。単に演技が下手なのかも分かりません。
主演の内山理名についても、以前から僕はこの人は女優としてどこが素晴らしいのかがまったく分からなかったんですが、この映画でもショットによっては本当にブスに見えるし、演技も上手くないでしょう。大学の友人役をしている安めぐみが内山理名のことを美人だと言うシーンがあったのですが、僕にはイヤミにしか聞こえませんでした。水川あさみの方はこの人の持つ雰囲気が役に合っていたので、まだ内山理名よりは良かったと思います。
というわけでこの映画はただただ早く終われという気持ちだけで見ていたのですが、ラストの未歩の携帯の画面が映るシーンは、やられたなと思いましたね。この映画はここだけは良かったですよ。点数は★1ですね。
僕が映画を見るパターンとして、自分で見たいなと思うのをDVD借りてきて見るパターンと、嫁はんが借りてきたDVDをヒマだから横で見てるパターンとがあります。この映画は後者のパターンで、自分では絶対に借りないであろう映画です。このパターンで映画を見たら、つまらん映画だと、嫁に「こんなしょうもない映画見せやがって!オレの貴重な時間を返せ!」と僕は自分で勝手に見たくせに怒って、夫婦ゲンカの元になあまり良くないのですが、たまに「ジョゼと虎と魚たち」みたいな当たりもあるので、ついつい人の借りてきたやつも見てしまうんですね。
<深紅 解説>
「眠れる森」などTVドラマの脚本を手がけ、「破線のマリス」で江戸川乱歩賞を受賞した野沢尚が自身の作品を脚本化した同名小説の映画化。一家惨殺事件で家族を失った孤独なヒロインに内山理奈がふんし、その小学生時代を堀北真希が演じる。加害者の娘役には水川あさみが熱演し若手女優がシリアスな演技合戦を見せる。監督は『白い犬とワルツ』をの月野木隆。先の読めない展開と人間の心の描写など野沢の構成力が光る。
小学生の秋葉泰子(堀北真希)は修学旅行中に深刻な面持ちの担任(南野陽子)に呼び出される。泰子の家族が深刻な事故に遭ったためにすぐに帰るようにと促されるが……。