どっちかといえば松本人志が好きな人。
CUBE(キューブ)
人間の負の部分が強調されていて、後味は良くない。
監督/ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演/モーリス・ディーン・ウィン、ニコール・デ・ボア、
デヴィッド・ヒューレット
(1997年・カナダ)
幾何学的な模様の壁に囲まれた、立方体の部屋。その部屋には、上下左右前後、つまり部屋のすべての面に扉がついています。しかしどの扉を開けても、同じような部屋が延々と続いています。このような奇妙な建造物に連れてこられた5人の人間、彼らはみな目覚めてみたらなぜかこの場所におり、わけもわからずさまよっているうちに偶然出会ったのです。5人は出口を探して部屋から部屋へと移動するのですが、この建造物はいくつかの部屋に殺人的なワナが仕掛けられていて、まずは刑務所脱獄の常習犯であり脱獄のプロともいえるレンが、ワナにかかって死んでしまいます。しかし彼らは、途中で出会った精神病のカザンと共に、なお脱出を試みます。
この映画はまず着想が素晴らしいです。面白くないはずがないだろうというぐらいの斬新な設定です。いくらいいアイデアに基づいて作られた作品でも、あまりにもストーリー展開がお粗末だと二流の作品で終わりますが、この映画は見せ方もうまいです。この6人がここに閉じ込められた理由についての説明が一切ないところや、いやらしくて強烈なワナの数々、脱獄の天才みたいなキャラをはじめに殺すところなど、こちらの緊張感はいやでも持続していきます。
登場人物はオープニングですぐに死ぬ人を入れて7人ですが、この映画ではそいつら以外にはまったく人間は出ません。本当に役者を7人しか使っていないのです。外の世界を描いたシーンも一切なく、同じような立方体の部屋ばかりでストーリーが進行していくので、この映画のセットは部屋から部屋へ移動するシーンを考えても部屋のセットが2個あれば十分でしょう。そうして考えるとおそろしく金のかかっていない映画ですが、それは言い換えれば極度の低予算でもこれだけのレベルの作品を作ることが出来るということを証明しています。費用対効果で考えれば稀有な名作ですね。
建造物の正体というこの映画最大の謎が謎のまま終わるのも、この映画のよいところではないでしょうか。話の途中で登場人物の中の一人であるワースが建物の外壁を設計していたことが判明するのですが、こいつも「全体像を知る者はいない。」とか、「何の展望もなく行われている計画だ。」とか、あげくのはてに「人生は複雑だ。」とかわけのわからないことしか言わないので、結局謎は謎のまま終わります。まあ卑怯といえば卑怯な作りですが、色々な解釈が出来るので想像がふくらんでいき、スケールの大きな映画に見えてきます。続編を作るのにも好都合ではないでしょうか。
しかし、映画としての出来がそれなりにいいことは認めますが、好きか嫌いかといえばあんまり好きではない映画ですね。とにかく一筋縄ではいかない話です。仲間達が力を合わせて幾多の困難に立ち向かうというような単純な脱出劇ではありません。それまでの人生で一切接点のなかった人達が1つの場所に閉じこめられ、命の危険に晒されたときに、人間はどのような心理状態に陥るか。極限状態での人間の狂気や脆さをかなり生々しく描いています
まあ実際におかしくなっていくのは1人だけなんですが、こいつが本当にムチャしますから、決して後味のよい映画ではありません。僕は始めは、登場人物たちそれぞれに見せ場があるので、こいつらはみんな理由もわからずに謎の建造物に閉じこめられ、たまたま出あったように見えるけれども、それは決して偶然でなく、一人一人の存在に何か意味があるのではないかと思っていたんですが、そうでもなさそうですね。人間の負の部分が強調されています。僕はあまりこういう展開にはしてほしくなかったなあと思うんですが。どうも後半はB級サスペンス映画のように見えてしまいます。
あと、登場人物の一人に大学で数学を専攻しているレブンという女子大生がいて、彼女が自分の才能を活かし部屋につけられたシリアルナンバーに法則があることを発見するんですが、文系の僕には何を言っているのかまったくわかりませんでした。もうちょっとアホの僕でも分かる法則にしてほしかったですね。
僕のこの映画に対する評価は★5です。この映画は僕の周辺では非常に評判がいいので、僕の好みではなかっただけで、いい映画なんじゃないでしょうか。
<CUBE 解説>
奇抜なストーリー、斬新なビジュアル・センスで話題となったカナダ産異色サスペンス。謎の立方体(=CUBE)に閉じこめられた男女6人の脱出劇を、緊迫感漲る演出で描く。ゲーム感覚の謎めいた物語やシュールな美術・SFX等を駆使し、人間の闇部を抉った秀作。ある日突然、密室に閉じこめられた6人の男女。それは正方形の巨大な立方体だった。いったい何のために作られたものなのか、なぜ自分たちが閉じこめられたのかは誰も知らない。脱出方法は6つあるハッチのいずれかを選び、同じ立方体でつながっている隣に移動しながら出口を探す以外ないが、いくつかの部屋には殺人トラップが仕掛けられていた。そんな中、やがて彼らは安全な部屋を示す“暗号”に気づくが・・・。