どっちかといえば松本人志が好きな人。
モンスターズ・インク
ストーリーにすごく力を入れているアニメ映画です。
監督/ピート・ドクター
出演/ジョン・グッドマン、ビリー・クリスタル、メアリー・ギブス
(2001年・米)
モンスターシティのエネルギーの源である人間の子供の悲鳴を集めるために、人間の世界に行き子ども達を怖がらせるのがモンスター株式会社の仕事なんですが、この会社の悲鳴獲得ポイントNO.1のエリート社員であるサリーが主人公の話です。モンスター達は人間の子どもは自分達に有毒な存在だと信じており、モンスターシティには子どもを持ち込んではいけないというルールがあるんですが、ある日サリーはモンスターシティに入ってきてしまったブーという人間の女の子を見つけてしまいます。サリーはブーの扱いに右往左往するんですが、やがて父親のような愛情が芽生え、彼女を守るために奮闘します。
この映画は松本人志が自著「シネマ坊主2」で絶賛していました。松本人志の言うとおりです。たしかにこの映画は面白いですね。モンスターの世界が子供の悲鳴をエネルギー源にしているという設定がまず面白いですし、その設定がラストへの伏線となっていて、ラストは非常にうまいことまとまっています。
この映画がストーリーにすごく力を入れているのがよくわかりますね。僕の偏見かもしれませんし、宮崎駿の最近の作品なんかはけっこうストーリーが難解になっていますが、総じてアニメ映画は子ども受けを狙いすぎて実写映画に比べストーリーが単純で面白くないと思います。例えば「となりのトトロ」なんかはなかなか評判の良い映画ですが、僕は全然面白くなかったですし。
だからこの映画はストーリーに力があるという点だけでもなかなかレベルの高いアニメ映画だと思いますよ。大人が童心に帰らなくても普通に見てて面白いですし、かといって内容を理解するのが難しいわけでもないので子どもも楽しめると思います。
おまけにテンポ良く話が進むから見てて全然だれないし、ストーリー展開に矛盾もないですね。
キャラクターもみんな魅力がありますね。主人公のサリーは気が優しいのですが、仕事が出来るキャラなので、子どもを怖がらせるのに躊躇してしまうことはありません。だからなついていたブーが仕事中のサリーを見てから怖がって逃げてしまうんですよ。もちろんサリーは悲しみます。ここらへんのエピソードの描き方なんかはすごく上手だと思いますね。相棒のマイクの方も根はイイ奴ですしね。
ちなみに僕はアメリカのCGっぽいアニメ絵はあまり好きではないので、個人的な好みで言えば絵は先日見た「スチームボーイ」の方が上です。しかしストーリーは92対3ぐらいでこの映画の方が上です。だから点数もかなりいいですよ。★7としときましょう。
作品の出来としては松本人志と同じく満点でも全然おかしくないんですが、まあ最後のシーンはちょっといらんかったかなという気がしますしね。大長編ドラえもんの「のび太の恐竜」みたいな終わり方にしてくれたら良かったんですけどね。
<モンスターズ・インク 解説>
子ども部屋のクローゼットの向こう側に広がるモンスターたちの世界。彼らは夜な夜なドアを開いては子どもたちを怖がらせているのだが、実は彼らは“モンスターズ株式会社”のれっきとした社員なのだ。この会社は、モンスターシティの貴重なエネルギー源である子どもたちの悲鳴を集めるのがその仕事。しかし、最近の子どもは簡単には怖がってくれない。モンスターズ社の経営も苦しくなってきている。そんなある日、大事件が発生した。モンスターたちが実はもっとも怖れる人間の女の子がモンスターシティに紛れ込んでしまったのだ!
東京ゴッドファーザーズ
早くクリスマスがきてほしいなあと思いました。
監督/今敏
声の出演/江守徹 、梅垣義明 、岡本綾
(2003年・日)
新宿で仲良く共同生活をしている、自称元競輪選手のギンちゃん、元ドラッグクイーンのハナちゃん、家出少女のミユキという3人のホームレスが主人公の話です。彼らは、あるクリスマスの夜に、ゴミ捨て場に置き去りにされている赤ちゃんを見つけます。彼らはその赤ちゃんの親探しをするのですが、その行程で次々と奇跡が起きて、彼らは自分の人生においての希望を見つけていきます。
この映画の舞台になっている東京、特に新宿なんかは僕も何回か行きましたが、奇跡が起きるようなイメージとはほど遠い現実感のある町です。そして、主人公達はホームレスなんですが、僕がそこらへんでよく見るホームレスといえば、生きてるのか死んでるのか分からないような感じで、とても人生に希望を持っているようには見えません。
一番奇跡が起きにくい場所で奇跡が起き、一番希望を持ちにくい人が希望を見つけるという話は、どんな人にでも爽やかな感動を与えてくれますね。ストーリー展開がかなりご都合主義なので「そんなことありえへんやろ。」というひねくれた気持ちもあるにはありますが、「クリスマスなんだからこんなことがあってもいいじゃないか。」という気持ちの方がずっと大きかったです。
それにこの映画はアニメですしね。アニメなんてもっと非現実なストーリーの作品はたくさんありますし、この映画はリアルなとこはリアルですから。ギンちゃんがホームレス狩りの不良少年達に殴られるシーンや、主人公達が電車に乗った時に周りの乗客が彼らの臭いにイヤな顔をするシーンなど、現実感のあるエピソードもあり、ただのメルヘンな映画ではありません。
しかし、ラストはとことんまでハッピーエンドにしても良かったと思うんですけどね。たしかにギンちゃん、ミユキ、ハナちゃんのホームレス3人はそれぞれ希望を見つけるんですが、これから幸せになるかどうかは実際は分からない終わり方です。特にハナちゃんのその後の人生はあまり見えてこないです。それだけがちょっと気になりました。
それでも、心温まる人情喜劇として、この映画は決して悪い出来ではないと思います。評価は★7ですね。映像もきれいですし、誰もが優しい気持ちになれる作品だと思います。
僕も早くクリスマスがきてほしいなあと思いましたね。あと11か月以上あるのが非常に残念ですけど。この映画は間違いなくクリスマスか、その2、3日前に見るべきです。
あと、この映画はホームレス3人が偶然赤ちゃんと出会ってから、次々に奇跡が起こるので、ある意味赤ちゃんが次々と奇跡を導き出す中心であるとも考えられます。その点で、藤子・F・不二雄のSF短編集にあった「幸運児」という話に似ていますね。たしか4ページぐらいしかなくてかなり短い作品だったし、ストーリーは全然違うんですけど。
<東京ゴッドファーザーズ 解説>
東京・新宿。元競輪選手のギンちゃん、元ドラッグ・クイーンのハナちゃん、家出少女のミユキのホームレス3人は、町の片隅で威勢よく生きていた。そんな彼らはクリスマスの夜、ゴミ置き場の中からひとりの赤ん坊を見つける。ギンちゃんは、すぐに警察に届けるべきだと主張するが、ずっと赤ん坊を欲しがっていたハナちゃんは、勝手に“清子”と命名して大はしゃぎ。結局、ハナちゃんに押し切られる形で3人は自分たちで清子の親探しをすることに。手掛かりはスナックの名刺と数枚の写真だけ。それでも3人は希望を抱いて奔走するのだが…。
ファイト・クラブ
僕はこの映画の暴力描写は不愉快ではなかったです。
監督/デビッド・フィンチャー
出演/エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、
ヘレナ・ボナム=カーター
(1999年・米)
この映画は、重病患者の会に出席したり、高級な家具を買ったりすることで心の慰めを得ている、不眠症の青年ジャックが主人公です。ある日彼は、顔もハンサムで、腕力もたっぷりありそうで、タイラーというワルっぽい青年と知り合います。タイラーに巻き込まれケンカの秘密クラブを設立したジャックは、殴り合いという行為を通して自分の悩みを忘れていきますが、その頃からタイラーに不穏な動きが見え始めます。
僕は、常々社会がつまらないと感じているし、物を買ったりしてストレスを解消するし、自分より不幸な人の話を聞くとどこかほっとしてしまうし、不眠症であるので、まるでジャックのような青年です。だからジャックのタイラーのようになりたいという気持ちは分かります。総合格闘技が人気があるように、男という生き物は、官僚や学者や将棋の棋士などの頭の良い男より、腕っぷしの強い男を素直に賞賛しますからね。
それは本能的なものなんでしょうね。ジャックが殴り合いによってリアルに生きていることへの手ごたえを見つけるように、もしかすると僕もこういうクラブに入ったら自分のアイデンティティーを確立させることが出来るかもしれないとちょっと思ってしまいます。
だから、暴力がダメなのは頭で分かっているんですが、ストーリーが全然嘘っぽく見えなくて、なかなか面白かったですね。2時間を超えるけっこう長い映画なんですが、テンポもいいですし、ストーリーも二転三転してハラハラするし、最後まで退屈しませんでした。
この映画の監督は「ゲーム」の監督ですね。「ゲーム」と同じようにこの映画にもどんでん返しがあります。僕は「ゲーム」のオチにはかなり怒りを覚えたんですが、この映画はありきたりなどんでん返しのオチだけれども、まあそんなもんだろなと納得はできた。だから、あまり難しいことを考えずに、普通に娯楽映画として見たら、この映画は十分楽しめると思いますよ。
それでも、この映画はかなり批判されるでしょうね。それは監督も作る前から分かっていると思いますけど。しかし僕には、この監督が話題作りのために暴力や狂気をあえて過激に描いてるようには見えませんからね。実際に人が死ぬシーンは少ないですし。だから僕は暴力描写とかは全然不愉快ではありませんでした。
終盤でこのクラブは破壊衝動が強くなりすぎて、社会に矛先を向けるようになり、テロ行為を行う危険な宗教団体のようになります。このあたりの終盤の展開の強引さは僕はちょっとついていけなかったですし、そうなった理由も一応語られているんですがイマイチ納得できませんでした。まあしかし、この監督が暴力は何も残さない、無意味なものなんだよときちんと言っているのは間違いないと思います。
評価は中の上として、★7ぐらいにしときます。この映画はサブリミナルっぽいからくりがあるようなんですが、そんなことをする意味があまり分からなかったことと、主演のエドワード・ノートンが僕があまり好きじゃないことから、ちょっと点を下げています。
<ファイト・クラブ 解説>
空虚な生活を送るヤング・エグゼクティブのジャックは、謎の男テイラーに導かれるまま、謎の秘密組織「ファイト・クラブ」のメンバーになる。そこは鍛え抜かれた男達が己の拳のみを武器に闘いを繰り広げる、壮絶で危険な空間だった。血飛沫が飛び散る拳闘シーンの迫力もさる事ながら、圧倒的な印象を残すのは「セブン」のデヴィッド・フィンチャー監督による暴力的ともいえる映像の洪水。世紀末のカオスをまさに”体感“できる一作だ。
深呼吸の必要
見ていて心地よい癒し系の映画です。
監督/篠原哲雄
出演/香里奈、谷原章介、成宮寛貴
(2004年・日本)
都会の生活でさまざまな傷を抱えた若者達が、沖縄でさとうきびを刈るバイトをします。はじめは慣れない作業にとまどい、仲間内でもいざこざを起こしていた若者達が、沖縄の美しい自然の中で働いているうちに、少しずつ変わっていく話です。
決して若者達の心身の成長を描いている映画ではありません。若者達が何らかのものを背負ってこのバイトに参加しているのは何となく分かります。どう考えてもこんなバイトはしないであろう派手な外見の女性や、どう考えてもバイトそのものをしないであろう極端に無口で人見知りの女性もいますから。しかし、そういう若者達の心の傷のようなものはほとんど描くことなく、壮大なサトウキビ畑で、若者達がひたすらさとうきびを刈っているシーンが延々と続きます。
こんな風に言うと退屈な映画のようですが、そうでもないんですよ。たしかに静かな映画なんですが、終わる時間が気にならない、いつまでも見ていたい映画です。
若者達の、身体をフルに使ってがんばって働いて、雇い主であるいつも温かく接してくれる老夫婦の家でご飯をみんなで一緒に食べて、寝て、また朝早く起きて働きに行く、という生活が淡々と描かれているだけなんですが、その生活が確かに彼らの心の傷を癒しているのが、具体的な描写が無くともはっきりとこちらに伝わってくるから、こちらも何か癒されていくような感じになり、見ていて心地よいんですね。
タイトル通りなんですが、「都会の生活はせちがらいけれども、あんまりつまらないことをあれこれ考えず、ちょっと深呼吸をしてみるぐらい、心に余裕を持って生きたらいいよ。」というテーマの、いわゆる癒し系の映画ですね。
僕は、「ユージュアル・サスペクツ」のような、ラストまでの展開に伏線がびっしり張られていて、ラストにそれらがすべて集約されどんでん返しがあるような脚本こそが、良い脚本だと思っていたんですが、この映画のように、「ユージュアル・サスペクツ」とはまったく正反対のオーソドックスで盛り上がるシーンがまったくない脚本でも、これはこれでリラックスして心地よく見ることが出来る良い脚本だなと思いました。
まあ、実際は沖縄もここまでのんびりした所ではないだろうし、この映画の老夫婦のような絵に描いたような善人もいないんでしょうけど、この映画の若者達のように都会の生活に疲れ、傷つき、悩んでいる人は、僕を含め実際に多いでしょうから、こういう映画の存在は貴重だと思いますよ。評価は★7とします。
この映画は、谷原章介、成宮寛貴、長澤まさみ、大森南朋と今かなり人気がある俳優、女優がけっこう出ていて、そういう人たちの昔の演技を見れるところもいいと思いますよ。しかし、主人公のちなみ役を演じる香里奈は演技が下手でした。あんまりセリフも多くないのにここまで下手ということは、相当下手なんだと思いますよ。顔は可愛いしスタイルもいいから素材は良いんですけどね。
<深呼吸の必要 解説>
『はつ恋』や『昭和歌謡大全集』などの篠原哲雄監督が、次代を担う有望な若手俳優7人を一同に集めて撮った、心温まる青春群像劇。本作でデビューを飾り、篠原監督の次回作『天国の本屋~恋火』にも出演している、香里奈の瑞々しい魅力や、『あずみ』の熱演も記憶に新しい、成宮寛貴らの自然体の演技に癒される。都会から来た軟弱な若者達が沖縄の大自然と向き合い、島の人々の温かさに触れ、成長して行く姿が頼もしい。派遣社員のひなみ(香里奈)や大学生の大輔(成宮寛貴)らは、さとうきび収穫時のアルバイト“きび刈り隊”に応募し、沖縄にやって来た。彼らは寝食を共にしながら、約7万本のきびを刈る作業に従事する。
ソウ2
「2」のジグソウは「1」より甘くなりましたね。
★★★★★★★☆☆☆
監督/ダーレン・リン・バウズマン
出演/ドニー・ウォールバーグ、ショウニー・スミス、
トビン・ベル
(2005年・米)
この映画では通称"ジグソウ"の殺人ゲームが、また新たに始まります。主人公の刑事がジグソウのアジトにたどり着き、ジグソウと対面するところからストーリーは始まります。アジトで見つけたモニター映像に、大きな建物に閉じ込められた8人の男女が映っており、その中には何と主人公の息子もいた、という話です。
僕はこの映画の前作はかなり好きでした。評価でいうと★9ぐらいです。僕はラストがどうなるのかとけっこう予想しながら映画を見る方なんですが、前作のラストはまったく予想できませんでしたからね。かなり衝撃的でしたよ。それも取って付けたようなラストではなく、「なるほど。やられたな~。」と素直に納得できる良いラストです。
この映画は途中でラストの予想がついて、まさにその通りのラストだったので、その点でやっぱり前作よりは落ちますね。しかし、これ単品で考えると間違いなく面白い映画ですよ。たぶん「1」が予想外にヒットしたので、「2」、「3」の制作が決定したのでしょうが、それにしてはなかなかの出来ではないでしょうか。
このシリーズは何が面白いかというとジグソウの仕掛けるゲームの内容ですね。今回は、時間が経つにつれ毒ガスが充満していく建物にいる自分の息子を、主人公の刑事は一刻も早く助けに行きたいのですが、ジグソウは刑事にここにじっと座っとけみたいなことを言うんです。
これが結論を言うとジグソウは間違えたことは言っていないんです。というか真実を言っているとこがこいつのイヤらしい所なんですよ。しかし、こいつの悪役としての魅力は「1」、「2」を通じてこういうイヤラしい所にありますからね。「2」でも悪役として光っていたということで良かったんじゃないでしょうか。
しかし、「1」で部屋に閉じ込められた2人と、「2」で建物に閉じ込められた8人を比べると、どう考えても「2」の人たちの方が恵まれた感がありますからね。「1」の2人は部屋という点でただでさえ閉塞感があるうえに、鎖で繋がれていますが、「2」の8人は動き回れて、仲間も多いぶん、ちょっとは境遇がマシでしょう。ジグソウも甘くなったな、といった感はあります。まあ、「2」で本当にジグソウに試されているのは刑事なんですが、ジグソウは「1」の2人よりも刑事にはかなりストレートに助かる手段を言っていますからね。
そういうジグソウの甘さの分、「1」に比べて「2」は見てて緊迫感という点で劣りました。ラストが読めるところもあわせて、評価は★7としときます。
そういえば、「1」に出てくるゴードン医師は「2」ではまったく出ませんでしたが、こいつはまさかジグソウの手先になってるんでしょうかね。ジグソウは病気だから手下に医者がいたら助かるでしょう。ジグソウはまだ健在ですし、「2」では若くて元気なジグソウの後継者も出てきますし、こんな悪のパーティーを「3」でどう始末つけるのかが気になるところです。この映画は「1」、「2」とも面白かったですし、「3」を早く見たいですね。
<ソウ2 解説>
激低予算作品ながら世界中で大ヒットした密室サスペンス・ホラーの第2弾。前作で監督を務めたジェームズ・ワンは製作総指揮を担当し、監督には新進のダーレン・リン・バウズマンを迎え、前作をしのぐ前人未到の衝撃作に仕上げた。前作に引き続きトビン・ベルが狂気の殺人犯を演じ、病的なまでに恐怖に満ちたゲームを続行させる。残忍な手口の殺人事件が発生。刑事エリック(ドニー・ウォルバーグ)は、過去に連続殺人犯として世の中を騒がせたジグソウ(トビン・ベル)の存在を思い出す。