忍者ブログ
ヤスオーのシネマ坊主
あるお方の『シネマ坊主』のパクリです。
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
ヤスオー
性別:
男性
自己紹介:
松本人志と映画が好きな人。
どっちかといえば松本人志が好きな人。
バーコード
ブログ内検索
[1] [2]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

どうしてこんなに面白くないか考えてしまう映画です。

c100644531_l.jpg ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

監督/トミー・リー・ジョーンズ

出演/トミー・リー・ジョーンズ、バリー・ペッパー、
     ドワイト・ヨアカム

 (2005年・米、仏)


 ある日、アメリカ・テキサス州のメキシコとの国境近くで、カウボーイのメルキアデス・エストラーダの射殺体が見つかります。しかし彼はメキシコからの不法入国者であったためか、保安官による捜査や埋葬はいいかげんなものです。メルキアデスと無二の親友であった同じくカウボーイの主人公ピートは、「俺が死んだら、メキシコにある自分の故郷ヒメネスに埋めてくれ」とメルキアデスから頼まれていたのを思い出します。彼はその後国境警備隊のマイクという男がメルキアデスを誤って撃ち殺したと知り、彼を拉致、メルキアデスの死体を掘り返させ、マイクと死体と共にメキシコヘ向かいます。

 この映画は率直に言って全然面白くありませんでした。しかし2005年のカンヌ国際映画祭で主演男優賞と脚本賞に輝いているぐらいだから素晴らしい作品のはずなんですよ。特に脚本を書いたギジェルモ・アリアガは、僕が大絶賛した「アモーレス・ペロス」の脚本家ですからね。どうしてこんなに面白くないか考えないといけません。

 まず、この映画は、「アモーレス・ペロス」みたいに時間軸を交錯させて描いているところが失敗してますね。このやり方がハマれば時系列通りに描くよりも鮮烈な印象をこちらに植えつけるので、最近の映画でけっこうよく見る手法です。しかし、結果論ですが、この映画はじっくり描いた方が良かったですね。時間軸が交錯する映画はそれぞれのシーンがパズルのピースのように断片的になるので、それがある程度組み合わさってくる中盤にならないと状況や人間関係が理解できないんですが、どうもこの映画はそれがマイナスに左右して全体として薄っぺらい感じになり、作品のテーマが心の奥に響いてきませんでした。

 例えば主人公のピートなんかは、途中まではただの頭のおかしいオッサンに見えますよ。友人を故郷に埋葬するということにひたむきな彼の姿が、ある意味気高くおごそかに見えるのは、本当に終盤になってからですね。彼がどうしてそこまで亡き友との約束にこだわるかは結局最後まで答えは出ないんですが、時系列通りにピートとメルキアデスが分かり合っていく様子を序盤で丁寧に描いてくれたら、少なくともピートを頭のおかしいオッサンとは思わなかっただろうし、ピートという男についても半分ぐらいは理解できて、彼を描いた骨太の人間ドラマとして楽しめたと思いますよ。

 メルキアデスについても、飾り気がない素朴な人間で、いかにもピートが気に入りそうなヤツだなあ、ぐらいしか思っていませんでしたから。彼については時間軸がどうこうというより全編を通して描写が浅かったですからね。ラストで初めてメルキアデスが抱えていた秘密が分かった時はそれなりに衝撃的だったんですけど、人物描写が薄いぶんあくまでそれなりでした。彼の本当の気持ちを推理していくと、アメリカに不法入国をするメキシコ人はどういった存在なのか、というところまで考えさせられます。本当に描き方次第では厚みのあるキャラクターになっていたはずなんですけどね。

 逆に、田舎町で退屈しているマイクの妻や、複数の男たちと関係を持ち奔放に生きる食堂の女など、女性キャラのエピソードはそんなにいらんかったなあという気がします。ピートやマイクと対比させる形で出しているんだと思うんですが、イマイチ関連性が薄いし、それだったら男キャラをもっとねちっこく描いた方がいいと思いますね。保安官のオッサンの描写なんてなくてもいいぐらいですから。

 この映画の点数は★1です。作り方によっては本当にいい映画になっていたと思うんですけど、実際面白くないので低い点を付けざるをえないですね。ギジェルモ・アリアガも、この映画では失敗していますけど自分の色はきちんと出しているし、ハマれば「アモーレス・ペロス」のように素晴らしい作品がまた作り出せると思いますよ。トミー・リー・ジョーンズは俳優1本でいったらいいと思いますね。監督の彼については何も見るべきところがありませんでした。

 ちなみにこの映画で唯一僕が気に入ったところはピートの家庭環境についてまったく触れられていないところです。ここを明らかにしていないからこそ、ピートのその後のストーリーが自分の中でふくらんでいって、いい余韻を残しますからね。

 




<メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 解説>

 
  『逃亡者』や『メン・イン・ブラック』シリーズの名優、トミー・リー・ジョーンズが初監督した、魂が揺さぶられる群像劇。製作と主演も兼ねる彼を、『25時』のバリー・ペッパーや『スリング・ブレイド』のドワイト・ヨーカムら個性派俳優が支える。昔気質の老カウボーイと、罪を犯した未熟な国境警備員が、死者と共に約束の地を目指す姿が描かれている。ロードムービーとしても秀逸で、2005年カンヌ国際映画祭で見事最優秀男優賞と脚本賞に輝いた実力作。
 テキサスで働くメキシコ人、メルキアデス・エストラーダ(フリオ・セサール・セディージョ)はある日銃弾に倒れる。ピート(トミー・リー・ジョーンズ)は生前の約束通り親友の遺体を、彼の故郷メキシコへ運ぼうとするが……。
PR

空中庭園

これは女性向きの映画なんでしょうね。

r087595062L.jpg ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 監督/豊田利晃

 出演/小泉今日子、鈴木杏、板尾創路

 (2005年・日)

 
 「家族の中では隠し事をしない」というのは、幸せな家庭を守るために絵里子が決めた京橋家のルールです。しかし、現実には家族はそれぞれ秘密を持っています。夫の貴史は麻子とミーナという二人の愛人がおり、浮気三昧の生活です。いつも明るい娘のマナは学校でイジメられており、ショッピングモールでいつもブラブラして学校はサボリがちです。いつも無気力な息子のコウも学校にまともに行っておらず、子どもは2人とも不登校の状態です。そして絵里子自身も自分の過去や母親との関係にトラウマがあり、それを解消できないでいました。

 そんなに出来は悪い映画じゃないと思うんですけど、イマイチ話に入っていけなかったですね。ストーリーとしては小泉今日子演じる絵里子が、勝手に家族間の変なルールを作ってその結果自分も他人も傷つけてあげくに1人でキレてるだけの映画です。

 絵里子以外の家族は僕から見ると本当にまともですからね。当然のことですがそれぞれに秘密を抱えているんですけど、だからといって絵里子のことを嫌っているわけじゃないんです。バスに乗っているシーンで貴史がマナに、「仕事を必死にがんばって、団地の家族の生活を必死に守る。ちゃんと毎日家にも帰る。これは愛がなければ出来ないだろ。」みたいなことを言うんです。自分の子ども相手だからもちろんきれいごとを言ってるだけかもしれないんですが、僕は額面通りに受け止め、ちょっと感動してしまいましたよ。この映画で唯一共感できたシーンです。絵里子はこの旦那とのキスすら拒否し、5年もセックスレスが続いているんですよ。そりゃ貴史が浮気するのもしょうがないですよ。

 絵里子にとって家族を作るということはすべて計算であり、こいつは自分の生理周期を把握したうえで計画的に貴史をホテルに誘うようなたちの悪い女ですからね。人に対する愛とか情とかそういうのに欠けすぎていますよ。自分が他人を愛することができないから、他人が自分を愛するということも想像できなくて、とにかく他人に裏切られたくないということだけを考えて変なルールを作るんです。

 そしてそのルールを実はみんな破っていることに気づいているくせに、表面上だけでもルールを守ることにこだわっているんです。家族全員がそのルールをいいことだと思っているなら仕方ないかなと思うんですが、この映画では絵里子だけがしょうもない「学芸会」にこだわっていて、他の家族は彼女に仕方なく合わせているだけですからね。僕としても、「この女は頭おかしいなあ。」という感想しかありませんよ。 

 「母親に憎まれてると思っている。」というのがこいつの人を信じない性格を構成する要因になっているようですが、全然納得できないですよ。僕の母親は僕には「家におったらうっとうしいから大学からはずっと1人暮らししろ、遠い大学行け。」と言いますし、妹には「○○(僕の名前)に比べてお前は頭が悪すぎる。産むの1人でやめときゃ良かった。」とか普通に言いますからね。物心ついた時から今まで母親に愛されているなんて思ったことないですよ。かといって憎んだりもしないですし。親なんてある程度の年齢まで食わせてくれて、虐待さえされなければ、それだけで十分だと思いますけどね。

 まあ、女性が見たら、少しは絵里子の気持ちも分かるのかもしれないですけど、僕にはまったく理解できないです。この映画は完全に絵里子中心に描かれた映画なので、見てて面白くはなかったですね。点数はちょっと厳しいですが★1にします。

 出演陣はみんな良かったんですけどね。主演の小泉今日子ももちろん頑張っていたんですが、僕が一番いいなと思ったのは板尾ですかね。僕はお笑い芸人など異業種の人が俳優業をするのは好きじゃないんですが、この映画の板尾はふわふわした感じなのに存在感があるという、この人独特の味を出していました。他の映画に出てるのを見ても普通に演技が上手いし、役者としての資質があると思いますよ。

 




<空中庭園 解説>

  『青い春』の豊田利晃監督が、角田光代の第3回婦人公論文芸賞受賞作「空中庭園」を映画化したヒューマンドラマ。主演は『風花』以来4年ぶりの主演映画への復帰となる小泉今日子。1つの家族を取り巻く人間模様を通し、「家族愛」という普遍的なテーマを描いた作品。大楠道代とソニンのガチンコ勝負もさることながら、小泉今日子の絶叫シーンは必見。
 京橋家の娘・マナ(鈴木杏)は学校をさぼり気味で、弟・コウ(広田雅裕)も学校に行ってない様子。そして父・貴史(板尾創路)は浮気に忙しく、妻・絵里子(小泉今日子)は、母・さと子(大楠道代)との関係に悩んでいた

ばかのハコ船

いやになるぐらい生活の匂いがする、クセのある映画

r161864414L.jpg ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 監督/山下敦弘

 出演/山本浩司、小寺智子、山本剛史

 (2002年・日)

 

 「青汁」ではなく、「あかじる」というオリジナルの健康食品の販売を手がけている、恋人同士の酒井大輔と島田久子が主人公です。しかしこの2人は商才がまるでありません。商品はまったく売れず、借金まで作ってしまいます。 そんな2人は、事業を軌道に乗せるため、大輔の地元に向かいます。東京では商売は失敗しましたが、地元では家族や友人のコネがあるので、何とかなるのではと考えたからです。しかしみんなの態度は冷たく、大輔と久子はいきなり行き詰まってしまいます。

 これはクセのある映画ですね。とにかく世界観が小さくて、いやになるぐらい生活の匂いがする貧乏臭い映画です。リアリティがある映画というのはこの映画の他にもけっこうあるんですが、そういう映画でも、主人公の置かれている環境が普通の人とは違っていたり、ありえない事が起きたりと、物語性をもたせるために何らかの特殊性はあるはずなんです。しかしこの映画の場合はその辺にいそうな普通の人たちの、劇的なことが何も起こらない当たり前の日常をただ淡々と描いているだけですからね。主演の山本浩司を初めとして、出ている役者もまったく華がありませんし。

 そしてこの映画は僕らがふだん生きている社会を描いているわけだから、映画の世界にすっと入り込めてリラックスして見れるはずなんですけど、この映画の醸し出す空気はすっと入り込めても非常に居心地は悪いです。例えばセリフなんかも、噛みまくりで詰まりまくりです。もちろん、僕らが普段している会話はこんな感じなんでしょう。しかしそれを映画として見ると、どこか歯がゆいし気まずいですね。また、登場人物たちが互いに心が通じ合っていないので、やる事なす事かみ合っていないのも、見てて非常に不愉快な気持ちになります。

 また、僕らが普段自分とは何の関係もない人のことを特に何とも思わないのと同じように、この映画に登場する人達も、生活感がありすぎて社会ですれ違う赤の他人に見えてしまい、まったく感情移入できないんです。自分とは何の縁もゆかりもない芸能人やスポーツ選手や映画を好きとか嫌いとかいうのは、やはり彼らが特別な存在であり、自分の頭の中で勝手に作った特別なイメージを追いかけているからなんでしょうけど、この映画の登場人物は普通すぎて何のイメージもわきませんからね。

 ストーリーの流れとしては、商才はないし、人をひきつける魅力もないし、要領も悪いし、根性もないのに、夢だけはあるという典型的なバカ者の大輔達と、地道に努力して着々と夢を実現させている風俗嬢ヴェロニカの生き方を上手いこと対比させといて、最後はある意味驚愕のラストで締めています。

 それまでは生活臭の漂うまったりとした空気で、くぐもった2人の生活を淡々と描いていたくせに、それをすべてぶち壊すかのようなラストですからね。僕は本当に唖然としてしまいましたよ。こんなに力の抜ける終わり方の映画はなかなかないんじゃないでしょうか。

 この映画は好きな人は好きでしょうね。監督が独特の個性を持っているのは分かりますし。ハリウッドの超大作があまり好きではない、映画マニアを自称する人なんかにはウケるんじゃないでしょうか。僕は全然好きじゃないですけどね。見てて面白いかというと、まったくそんなことはないと思うし、それどころかしんどくなってきますし。評価は★1ですね。ただ、インパクトがある映画なので、見る価値はあると思います。10人見たら9人は僕のようにこの映画はどこが面白いんだと言いますが、残る1人が大絶賛するような映画です。

 しかしこの監督が「リンダリンダリンダ」という商業ベースに乗っている作品を作っているというのはびっくりですね。どういう理由でこの人を抜擢したんでしょうか。僕は今までは「リンダリンダリンダ」を「スウィングガールズ」の二番煎じの絵に描いたような青春物だろうと思っていたんですが、おそらくこの人が作ったんだから似て非なるものなんでしょうね。

  




<ばかのハコ船 解説>

 東京に住む酒井大輔とその恋人・島田久子は、自分たちで開発した健康飲料“あかじる”の自主販売を始める。だが商品はさっぱり売れず、2人はついに500万の借金を作ってしまった。それでもこの事業をあきらめきれない彼らは、心機一転、大輔の故郷での再起を図る。さっそく大輔の実家に帰ってきた2人は、地元のコネを頼りに起死回生を狙うが、両親や親類、同級生たちからことごとく反対され、逆に行き場を失ってしまった。2人は途方に暮れ、いつしか無為に日々をやり過ごすだけの生活が続くようになり…。

 

ホテル・ルワンダ

「知るべき」映画だが「見るべき」映画とは思わない。

c100635611_l.jpg ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 監督/テリー・ジョージ

 出演/ドン・チードル、ソフィー・オコネドー、

        ホアキン・フェニックス

                       (2004年・英、伊、南アフリカ)

 

 1994年のルワンダという国での話です。この国ではフツ族とツチ族の民族紛争が終息し、和平協定が結ばれることになっていました。しかしラジオで、「フツ族出身の大統領がツチ族に殺された」というニュースが流れたのをきっかけに、政府軍とフツ族によるツチ族と反乱軍への虐殺が始まりました。自らはフツ族ですがツチ族の妻を持つホテルの支配人のポールは、家族をホテルにかくまいますが、逃げ場を失った人々も次々とホテルに押し寄せてきます。1200人以上の人をかくまうことになったポールは、国連や諸外国の救援を待ちます。
  
 この映画は、自分が無知であったことに気づかせてくれたという点で、たいへんためになった映画です。ルワンダという国は名前しか知らなかったし、ルワンダがベルギーによる「フツ族」、「ツチ族」の区分けによって国内がムチャクチャになっていたことも知らなかったし、そもそもルワンダ紛争と虐殺の事実を知りませんでした。この映画に登場するジャーナリストが、「今起きている虐殺の映像を世界に発信しても、他国の人々はその映像を見て『怖いね。』と言うだけでディナーを続ける。」とか言っていましたが、映像すら見ていない僕はその人達以下ですね。

 僕以外にもルワンダ紛争について知らない人はいるでしょうから、このような映画が作られることは大変有意義なことであると思います。しかし、この映画を見て面白かったかというと、たいへん言いにくいですが面白くなかったです。「知るべき」映画だとは思いますが、「見るべき」映画とは思いません。

 僕はこの映画は虐殺の実態を生々しく描き、残酷な現実を見る者に突きつけるような、かなり重たい作品だと思っていたんですよ。しかし実際はそうでもなくて、暴力描写も少ないし、娯楽要素もあり、わりと普通の映画です。いや僕は別に残酷なシーンが好きなわけではないんですよ。ですが、インターネットでの署名運動により公開が実現したと言うわりには、何やこの程度かいなと、ちょっと拍子抜けしました。どうして公開が危ぶまれたのかよく分かりません。この程度の映像だったら、ドキュメンタリー番組でなんぼでも見れるでしょう。

 それに僕がこの映画を見て、自分の意識が何か変わったかといえば、何も変わっていませんから。例えば、国連軍が外国人だけを助けて撤退してしまうシーンがあります。国連にとっては、ルワンダは救う価値のない国で、ツチ族は救う価値のない人々なんでしょう。しかしルワンダが原油やダイヤが産出されてもっと豊かな国であったり、ツチ族のルーツが西側諸国の人々と同じであったりしたら、もっと事態は変わっていたかもしれない。これは一言で言うと差別です。ですがこの映画は見る人に「国連軍は最悪や!差別しやがって!」と思わせることはできても、見る人1人1人の意識を変えるほどのパワーは持っていない映画のような気がします。

 あと、史実は別にしてエンターティメントとしての映画として言わせてもらうと、この映画は主人公のポールの家族愛が大きなテーマの1つなんですが、こいつの妻がどうしようもないオバハンなんですよ。ポールは機転も利き、勇気もあり、行動力もあり、プロのホテルマンとして培った信頼や交渉術も持っている、闘う力を持った人間です。しかしポールがその力で1200人以上もの人々を救うためにがんばっているのに、オバハンの方は、寝て、食って、怯えて、たまに兄夫婦を探せと言って、ホテルにかくまっている人全員のために頑張ろうとしているポールをなじってと、何の役にも立っていないうえに自分達のことばかり考えている人間です。「お前のダンナが体張って頑張ってるんだから、お前も少しは頑張れよ!」とイライラして困りましたよ。

 おまけにこの映画はこのオバハン以外を見ても、「この人は立派だなあ。」と思える人間がポール以外まったくいません。ポール1人だけが極端に魅力的に描かれています。僕は昔「ブレイブハート」という映画を見て涙が出るくらい感動したんですが、この映画のどこに一番感動したかというと、英雄ウィリアム・ウォレスが立派だったということではないんです。闘い続けた彼の勇気に彼の周りにいた自分の保身ばかり考えていた人も感化され、最後にみんなが立ち上がり闘ったところなんです。まあ、事実を基にした映画なので、実際にポール以外に称賛すべき人間がいなかったんだと言われればそれまでですけど。

 この映画の評価は★1ですね。たぶんこの映画にこんなに低い評価をつけるのも僕ぐらいでしょう。
 




<ホテル・ルワンダ 解説>

 アフリカのルワンダで内紛による大量虐殺の危機から人々を救った、実在のホテルマンの勇気と良心を描いた感動ドラマ。主演はスティーヴン・ソダーバーグ監督作品の常連、ドン・チードル。『父の祈りを』など脚本家として活躍するテリー・ジョージが脚本、監督、製作を手がけ、1200人もの命を守り抜く男の勇姿をヒロイックに描き出す。日本公開は危ぶまれていたが、若者によるインターネットでの署名運動が功を奏し、公開が実現した話題作。
 1994年、ルワンダの首都キガリ。高級ホテル「ミル・コリン・ホテル」で働く支配人のポール(ドン・チードル)は毎日順調に仕事をこなしていたが、ある晩、ホテルからの帰宅途中に街で火の手が上がっているのを発見する。

 

深紅

「火曜サスペンス劇場」レベルの、重みも深みもない映画

r082060435L.jpg ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 

 監督/月野木隆

 出演/内山理名、水川あさみ、小日向文世

 (2005年・日)

 

  主人公の秋葉奏子は、修学旅行での宿泊先で、家族が事故に遭ったという知らせを聞きます。先生に連れられ急いでタクシーで病院に駆けつけたのですが、両親と弟2人はすでに死んでいました。実は彼らは、都築則夫という男に殺されたのです。秦子はそれ以来、宿泊先から病院までの4時間の追体験に襲われる後遺症に悩むことになります。そして、8年後、大学生になった奏子は、自分の身元を隠したまま、自分の家族を皆殺しにした都築の娘、未歩に近づいていきます。

 全然面白くなかったですね。以前見た同じようなテーマの映画である「オールド・ボーイ」と比べて、ストーリーもイマイチだし、主演の役者の演技も「オールド・ボーイ」の主役のオッサンに比べれば全然だし、演出も安っぽいし、すべてにおいてスケールの小さい作品で、重みも深みもありません。「火曜サスペンス劇場」ぐらいのレベルですかね。
 
 未歩の父である都築則夫についてはあまり突っ込んで描いておらず、主人公の女性2人の心情に的を絞って作っている映画です。しかしその2人、特に奏子からは、「加害者の娘」、「被害者の娘」として背負っているものの重さがあまり感じられませんでした。この映画は結局は過去を乗り越えるということがどういうことなのかを言いたいんでしょうが、2人の過去の重さが伝わってこず感情移入もできない僕には何の感動もありません。2人のキスシーンも、意味していることはストーリーの流れで分かるんですが、僕にとっては「何でそこまでするの。」といった感じです。

 それまでの話の展開も面白くなかったですね。奏子は、自分の家族を殺した男の娘である未歩を当然憎んでいます。しかし、奏子と未歩はその事件により人生を狂わされたという共通の過去を持っており、2人にしか理解できないものがあるのです。奏子はそういう複雑な感情のもと、未歩を許すのか憎み続けるのか、どちらを選択するのか、といったことを描いているんですが、僕は正直どっちでもええわと思いました。だいたい奏子の復讐計画がつまらないですからね。未歩がダンナにDVを受けていて苦しんでいるので、未歩にその夫を殺してみればと提案するんです。おいおいその程度かよと思いましたよ。

 あと、配役についてですが、小学生時代の奏子の役を堀北真希がやったらいかんでしょう。修学旅行中という設定なのでランドセルを背負うシーンがなかっただけでもよかったんですが、いくら何でも小学生には見えません。おまけに、この子が8年たったら内山理名になるというのはいくらなんでも無理やりすぎです。無名でもいいから、もうちょっと内山理名に似た子役を連れてくればいいじゃないですか。事務所の意向みたいなのが見え隠れしていて嫌な感じがしました。都築則夫役の緒方直人も、おそらくこの役で新境地を開きたかったのでしょうが、僕には役に合ってないなという印象しかありませんでした。先生役の南野陽子は、どういうキャラを演じたいのかよく分かりませんでした。単に演技が下手なのかも分かりません。

 主演の内山理名についても、以前から僕はこの人は女優としてどこが素晴らしいのかがまったく分からなかったんですが、この映画でもショットによっては本当にブスに見えるし、演技も上手くないでしょう。大学の友人役をしている安めぐみが内山理名のことを美人だと言うシーンがあったのですが、僕にはイヤミにしか聞こえませんでした。水川あさみの方はこの人の持つ雰囲気が役に合っていたので、まだ内山理名よりは良かったと思います。

 というわけでこの映画はただただ早く終われという気持ちだけで見ていたのですが、ラストの未歩の携帯の画面が映るシーンは、やられたなと思いましたね。この映画はここだけは良かったですよ。点数は★1ですね。

 僕が映画を見るパターンとして、自分で見たいなと思うのをDVD借りてきて見るパターンと、嫁はんが借りてきたDVDをヒマだから横で見てるパターンとがあります。この映画は後者のパターンで、自分では絶対に借りないであろう映画です。このパターンで映画を見たら、つまらん映画だと、嫁に「こんなしょうもない映画見せやがって!オレの貴重な時間を返せ!」と僕は自分で勝手に見たくせに怒って、夫婦ゲンカの元になあまり良くないのですが、たまに「ジョゼと虎と魚たち」みたいな当たりもあるので、ついつい人の借りてきたやつも見てしまうんですね。 


 




<深紅 解説>

 「眠れる森」などTVドラマの脚本を手がけ、「破線のマリス」で江戸川乱歩賞を受賞した野沢尚が自身の作品を脚本化した同名小説の映画化。一家惨殺事件で家族を失った孤独なヒロインに内山理奈がふんし、その小学生時代を堀北真希が演じる。加害者の娘役には水川あさみが熱演し若手女優がシリアスな演技合戦を見せる。監督は『白い犬とワルツ』をの月野木隆。先の読めない展開と人間の心の描写など野沢の構成力が光る。
 小学生の秋葉泰子(堀北真希)は修学旅行中に深刻な面持ちの担任(南野陽子)に呼び出される。泰子の家族が深刻な事故に遭ったためにすぐに帰るようにと促されるが……。
忍者ブログ | [PR]
| Skin by TABLE e.no.ch