どっちかといえば松本人志が好きな人。
アルカトラズからの脱出
この映画のどこが面白いのか見た人に聞きたいです。
監督/ドン・シーゲル
出演/クリント・イーストウッド、パトリック・マクグーハン、
ロバーツ・ブロッサム
(1979年・米)
これまで一度も生きて脱獄できた者はいないという、周りを激流の海に囲まれた島の中にあるアルカトラズ刑務所。そこからの脱獄を企てた囚人達を描いた映画です。
実話を基にした映画なのは分かっているんですが、ストーリーにこれっぽっちもひねりがなくて、まったく面白くなかったですね。主人公のフランク達が脱獄を計画する様子をひたすら描き、ただ脱獄するだけです。ラストもすごくあっけなかったですね。
ストーリーに盛り上がる所がないだけでなく、登場人物のセリフも少ないし、音楽もあまり鳴らないし、映像も地味だし、演出もひたすら抑えた本当にあっさりした映画です。あっさりしすぎて見てて眠くて眠くて仕方がなかったです。
たしかに、「ハムナプトラ」のように過剰なアクションやベタな演出の映画はそれはそれでイヤですが、この映画よりはマシだということが分かりました。この映画は僕は見る前から名前は知っていたし、そんなに評価は低くはないと思いますが、いったいこの映画のどこが面白いのか見た人に聞きたいぐらいです。
いいように考えたら、主人公達があまりしゃべらないのは自由を欲する強い感情を内に秘めているように見せるため、音楽があまり鳴らないのはピリピリした緊張感を出すため、映像が地味なのは昔の映画だから撮影手法が発達してないため、と解釈できないことはないです。しかし、主人公は刑務所に入っている以上悪いことをしているのであり、自由が大事なんだったら最初っから悪いことしなきゃいいと思いますし、実話に基づいている映画だから最後には脱獄は成功すると分かっているので、ピリピリした緊張感なんかまるでありませんでした。
まあ、アルカトラズ刑務所は脱獄絶対不可能な刑務所と言われていたとかいうわりに、壁がちょっとほじくったぐらいでボロボロ崩れるぐらいもろい刑務所なので、こんなしょうもないとこが脱獄不可能とか言われてるようじゃあ、アメリカの凶悪犯はどんどん脱走しているんだろうなあと僕は別の意味で緊張感を持ちましたけどね。
とりあえずこの映画は何もいいとこがなかったので評価は★0にします。ちょっと前に見た「ザ・ビーチ」というしょうもない映画でも、ロケ地のピピ島の風景がきれいだったし、どんな映画でもちょっとしたいいところはありそうなんですが、この映画はほんとに何もなかったです。
ちなみにこの映画の主演はクリント・イーストウッドですが、僕はこの人とは本当に相性が悪いです。この人が監督をした「許されざる者」もアカデミー監督賞とアカデミー作品賞を受賞しているらしいですが僕は全然面白くなかった。そもそもこの人は大物っぽいですがそんなにすごいんですかね。演技はそんなに上手だとは思いませんし、カッコつけっぽい雰囲気が漂っていて鼻につきますね。この映画でも囚人のくせに髪型はいつも決まっているし、仕置房に何日も入っていながらも無精髭すら生えていないですし、どう見ても不自然です。
<アルカトラズからの脱出 解説>
脱獄絶対不可能と言われたサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所。実話を基に、そこから奇跡の脱出を果たした男たちの姿を描いたサスペンス映画の傑作。
ほしのこえ
ほとんど1人で作ったということに意味がある作品です。
監督/新海誠
声の出演/篠原美香、新海誠、武藤寿美
(2002年・日)
爽やかな中学生カップルのミカコとノボルが主人公です。 中学3年生の夏、ミカコは異生命体を追跡調査する目的の国連宇宙軍の選抜メンバーに選ばれ宇宙へ行きます。 ノボルは地球でそのまま高校に進学します。2人の間を繋ぐのは携帯電話のメールのみです。国連宇宙軍は宇宙の先へ先へと進んでゆき、ミカコはだんだんと地球から離れていくので、地球にいるノボルへのメールはだんだん届くのに時間がかかるようになってきます。ひたすらノボルからの返事を待ちながら異生命体と戦うミカコと、ミカコからのメールを待ちながら大人へと成長してゆくノボルのとても長距離な恋愛を描いた話です。
僕は過去にエヴァンゲリオンを見ようと思ってDVDの第1巻を借りて、10分でバカバカしくなって見るのをやめた男です。子どもの頃、ガンダムやマクロスにも全然興味がなかったです。だからこういう近未来を舞台にしたメカ同士が戦うような映画はたぶん自分には合っていないだろうなと思いつつも、新海誠という人間がほとんど1人で作った作品だという話を聞いたので、気になって見ることにしました。ですが、この映画を見るにあたってメカの好き嫌いはあんまり関係ないですね。完全に恋愛がテーマの映画です。
しかし、どういういきさつでこの女の子は中学生なのに国連宇宙軍の選抜メンバーに選ばれたのかとか、宇宙船と地球との通信手段がなぜ携帯のメールなのかとか、なぜいつもこの女の子は制服を着ているのかとか、しょうもないことが気になって、映画の雰囲気に入っていけなかったですね。あまり細かいことを気にせず、こういう登場人物が少ない小さな世界にどっぷりひたれればいいんでしょうけど、僕はダメでした。
恋愛の描き方も、どう考えても男目線ですしね。まず、ヒロインのミカコは美少女です。そして、ミカコが当然に持っているであろう同性の友人や国連宇宙軍の仲間などノボル以外の人間関係が全然描かれていないので、ミカコはあくまでノボルのことだけを考えている子、悪い意味でいえばノボルの所有物に見えます。この映画のラストで感動するのも男だけでしょうね。
ただ、この映画は、新海誠という人間がほとんど1人で作ったということに一番意味があるので、普通の映画のようにストーリーなどにあれこれケチをつけるのはナンセンスなんですけどね。スタジオジブリの新作がこの映画だったら間違いなく大ブーイングです。1人で作ったからこそ、主流のものを嫌い非主流のものが好きな人たちに支持され、そこそこ有名な作品になり、僕も見たんですから。
僕も、1人でこの作品を作ったことに対しては素直にすごいと思いますし、野球でいえばセ・リーグよりパ・リーグが好きな非主流のものを愛する人ですから、この映画に対する評価はそんなに悪くないです。★4ぐらいにしときます。
それに、ストーリーがイマイチでも、僕が見るかぎりは絵はすごくきれいですし、たぶんこの監督の持ち味だと思いますが作品全体の印象がすごく爽やかですから、見てて全然苦痛ではないです。ポスターとかがあったら欲しいぐらいです。
ちなみに、この映画のDVDには、「彼女と彼女の猫」という作品もおまけで入っています。こちらは5分ぐらいしかないんですけど、僕は「ほしのこえ」よりこちらの方が気に入りました。ポスターとかがあったら欲しいぐらいです。
<ほしのこえ 解説>
個人制作でありながらもクオリティの高いフルデジタルアニメーション。制作者の新海誠は本作をMacたった1台で作成したという。長峰美加子と寺尾昇は仲の良い同級生。中学3年の夏、美加子は国連宇宙軍の選抜に選ばれたことを昇に告げる。翌年、美加子は地球を後にし、昇は普通に高校へ進学。地球と宇宙に引き裂かれたふたりはメールで連絡を取り続ける。しかしメールの往復にかかる時間は次第に何年も開いていくのだった。美加子からのメールを待つことしかできない自分に、いらだちを覚える昇だったが…。
ソナチネ
自分が作りたいものを作ってるだけのような映画です。
監督/北野武
出演/ビートたけし 、国舞亜矢 、渡辺哲
(1993年・日)
暴力団である北嶋組の幹部、村川が主人公です。彼は親分から、沖縄の中松組へ加勢に行って欲しいと頼まれます。村川は右腕である片桐、ケンなどをつれて沖縄へ行きますが、いきなり襲撃されます。身の危険を感じた村川達は東京の親分に連絡しますが、この沖縄行きは羽振りのいい自分達を妬んだ親分と他の幹部の罠だったことが判明し、彼らは帰るところがなくなります。
この監督の作品は、ヤクザや刑事を題材にした映画が多いんですが、それは彼が「死」をテーマに映画を撮ることが多いから、死と常に向き合っている仕事をしている人を描くことになるんでしょう。そして彼は「死」というものに対する価値観がちょっと特殊で、人間にとってかなり重大な、深刻なものであるはずなのに、極端なぐらい価値を見出しません。
おそらく、「生きたい」という人間の細胞の一つ一つにまで染み付いている本能を捨て、いかに自分の命を簡単に捨てることができるかということを、男の美学のように考えているんでしょう。
僕は別にそれがカッコイイとは思いませんが、この監督が揺ぎ無い自分の価値観を持っていて、その価値観をテーマに素晴らしい表現力で作品を作り出しているのは認めます。ロシアンルーレットのシーンなんかを見ると、素直にこの監督はすごいなあと思いますね。
だから、北野武という人の監督としての評価は、賛否両論あると思いますが、僕は才能は間違いなくあると思います。そして彼の映画の中でも、この映画は監督の価値観や主張がかなり強く出ている映画だと思いますね。
ただ、見てて面白いかと言われると、そうでもない。客を喜ばせようというよりも、自分が作りたいものを作ってるだけのような作品です。そりゃこの監督は映画以外のとこでかなり稼いでますから、そういうスタンスで映画を作ってもいいんでしょうが、ちょっとは大衆に媚びるとこがあってもいいんじゃないかと思いますね。もちろん、人気俳優勢揃いの連ドラの延長線上のくだらない映画に比べれば、全然ましですけど。
評価は★6ぐらいですね。ストーリーはそんなに面白くないんですが、印象に残るシーンはありますし、ちょうど真ん中ぐらいの点数です。
ですが、この映画に出演している頃は頃はおそらく今より全然売れてなかったであろう、大杉漣や寺島進にけっこういい役を与えているのはさすがですね。人気先行の俳優を選ばずに、こういう実力派の俳優を抜擢するところは、素晴らしいと思います。
<ソナチネ 解説>
北野武の『あの夏、いちばん静かな海』に続く四本目の監督作品。沖縄を舞台に、二つの組の間で繰り広げられている抗争の助っ人として送られたヤクザ幹部の男の結末を描く。組長からの命令により、沖縄にある中松組の抗争の助っ人として舎弟たちと共に沖縄へと出向いた村川。しかし、抗争は収まるどころかますます悪化。事務所を爆破された村川たちは、海岸沿いの空き家へと身を隠すことになる
ゴーストワールド
オシャレな雰囲気ですが、ストーリーはリアルな映画です。
監督/テリー・ツワイゴフ
出演/ソーラ・バーチ 、スカーレット・ヨハンソン 、
スティーヴ・ブシェミ
(2001年・米)
主人公のイーニドという女の子は高校を卒業したんですが、働きもせず勉強もせずブラブラしています。将来への漠然とした不安におびえつつも、何か目標を見つけて努力することもなく、ただ漫然と日々を過ごしています。そんなある日ひょんなことから、ブルースレコードのコレクターでオタクっぽいシーモアというオッサンと出会い、ちょっと彼に惹かれるものがあり、交流を始めます。一方イーニドの親友のレベッカは、マンションを借りたり働き始めたりと自立の道を歩み出します。そうして現実に向き合うレベッカと、現実逃避を繰り返すイーニドとの距離はだんだん離れていきます。
そんなに有名じゃなさそうな映画だし、僕もそんなに期待はしてなかったんですけど、いい映画ですね。タイトルは「ゴーストワールド」とちょっとホラー映画っぽいですが、決してお化けとかが出るわけではなく、主人公のイーニドにとっての現在生きている世界を比喩して言っているのでしょう。なかなかいいタイトルです。
僕は大学卒業と同時に就いた仕事は人間関係とかがイヤになって半年で辞め、対人恐怖症みたいなものになってバイトもせず、1年半ぐらい半引きこもり状態の生活をしていました。その時の僕はこの映画のイーニドと同じくかなり気持ちが鬱屈していて、世の中の何もかもがイヤでイヤで、誰も彼もが嫌いで嫌いで、本当に何もする気が起こりませんでした。
この映画の主人公のイーニドも僕も、何のとりえもないがプライドだけは高い、コンプレックスの塊のような人間です。自分が社会に出ても何もできないのは分かっていますし、それを人から責められると傷つくしムカつくし我慢できない、かといってプライドは高いから現実を見つめて努力もしない。だから人生が八方塞がりになってしまいます。
しかしこの映画の展開にはある意味びっくりしましたね。僕は何とか働くようになり、人よりは劣っているものの昔の自分よりは社会適合性も身につけたのですが、イーニドが最後まで八方塞がりのままだとは思わなかったです。何かのきっかけで前向きに生きるようになって、彼女の将来に希望が見えるようなラストだと思っていたんですけどね。
かなり悲しいラストです。この映画のラストはちょっとぼやけていて、監督が逃げたなという印象があるんですが、少なくともハッピーエンドではないでしょう。色々な解釈が可能だと思うんですが、僕はイーニドは死んだと解釈しました。
だからこの映画はジャケットやイントロダクションで抱くイメージと異なり、決して女の子向きのちょっとオシャレな爽やか青春映画ではありません。主人公達の着てる服や部屋の装飾が結構オシャレなので映像の雰囲気は明るいんですが、ストーリーはけっこうリアルで救いのない話です。評価は★6ですね。好きな映画ではないんですが、映画としてはいい映画だとは思います。
ちなみにこの映画の主演のソーラ・バーチは「アメリカン・ビューティー」で見たことがあります。その時はそんなに印象に残っていなかったんですが、この映画ではかなり良い演技をしてると思います。本人もそろそろ演技派女優への脱皮を考えているんでしょう。しかし、シーモアを演じたスティーヴ・ブシェミという人の演技はそれ以上にすごかった。この人は僕が全く知らなかった俳優です。調べてみると僕の見た映画では「アルマゲドン」に出てたようなんですが、映画自体がしょうもなくて僕が半分寝てたせいもあるのかまったく覚えていません。しかし、僕が最近見た映画の中では、間違いなくトップの演技でした。さえない中年男のほろ苦い哀愁がにじみ出ていて、とてもカッコ良く見えました。
<ゴーストワールド 解説>
全米の若者の間でカリスマ的人気を誇るダニエル・クロウズの新感覚コミックを「アメリカン・ビューティー」のソーラ・バーチ主演で映画化したおしゃれでキッチュでとびきり切ない青春ストーリー。イーニドとレベッカは高校を卒業した今も進路も決めないまま好きなことだけしてフラフラする毎日。ある日、二人は新聞の出会い系の広告に載っていた中年男をダイナーに呼び出し、待ちぼうけを食っている惨めな姿を見て暇を潰すのだったが……。
東京ゴッドファーザーズ
早くクリスマスがきてほしいなあと思いました。
監督/今敏
声の出演/江守徹 、梅垣義明 、岡本綾
(2003年・日)
新宿で仲良く共同生活をしている、自称元競輪選手のギンちゃん、元ドラッグクイーンのハナちゃん、家出少女のミユキという3人のホームレスが主人公の話です。彼らは、あるクリスマスの夜に、ゴミ捨て場に置き去りにされている赤ちゃんを見つけます。彼らはその赤ちゃんの親探しをするのですが、その行程で次々と奇跡が起きて、彼らは自分の人生においての希望を見つけていきます。
この映画の舞台になっている東京、特に新宿なんかは僕も何回か行きましたが、奇跡が起きるようなイメージとはほど遠い現実感のある町です。そして、主人公達はホームレスなんですが、僕がそこらへんでよく見るホームレスといえば、生きてるのか死んでるのか分からないような感じで、とても人生に希望を持っているようには見えません。
一番奇跡が起きにくい場所で奇跡が起き、一番希望を持ちにくい人が希望を見つけるという話は、どんな人にでも爽やかな感動を与えてくれますね。ストーリー展開がかなりご都合主義なので「そんなことありえへんやろ。」というひねくれた気持ちもあるにはありますが、「クリスマスなんだからこんなことがあってもいいじゃないか。」という気持ちの方がずっと大きかったです。
それにこの映画はアニメですしね。アニメなんてもっと非現実なストーリーの作品はたくさんありますし、この映画はリアルなとこはリアルですから。ギンちゃんがホームレス狩りの不良少年達に殴られるシーンや、主人公達が電車に乗った時に周りの乗客が彼らの臭いにイヤな顔をするシーンなど、現実感のあるエピソードもあり、ただのメルヘンな映画ではありません。
しかし、ラストはとことんまでハッピーエンドにしても良かったと思うんですけどね。たしかにギンちゃん、ミユキ、ハナちゃんのホームレス3人はそれぞれ希望を見つけるんですが、これから幸せになるかどうかは実際は分からない終わり方です。特にハナちゃんのその後の人生はあまり見えてこないです。それだけがちょっと気になりました。
それでも、心温まる人情喜劇として、この映画は決して悪い出来ではないと思います。評価は★7ですね。映像もきれいですし、誰もが優しい気持ちになれる作品だと思います。
僕も早くクリスマスがきてほしいなあと思いましたね。あと11か月以上あるのが非常に残念ですけど。この映画は間違いなくクリスマスか、その2、3日前に見るべきです。
あと、この映画はホームレス3人が偶然赤ちゃんと出会ってから、次々に奇跡が起こるので、ある意味赤ちゃんが次々と奇跡を導き出す中心であるとも考えられます。その点で、藤子・F・不二雄のSF短編集にあった「幸運児」という話に似ていますね。たしか4ページぐらいしかなくてかなり短い作品だったし、ストーリーは全然違うんですけど。
<東京ゴッドファーザーズ 解説>
東京・新宿。元競輪選手のギンちゃん、元ドラッグ・クイーンのハナちゃん、家出少女のミユキのホームレス3人は、町の片隅で威勢よく生きていた。そんな彼らはクリスマスの夜、ゴミ置き場の中からひとりの赤ん坊を見つける。ギンちゃんは、すぐに警察に届けるべきだと主張するが、ずっと赤ん坊を欲しがっていたハナちゃんは、勝手に“清子”と命名して大はしゃぎ。結局、ハナちゃんに押し切られる形で3人は自分たちで清子の親探しをすることに。手掛かりはスナックの名刺と数枚の写真だけ。それでも3人は希望を抱いて奔走するのだが…。