どっちかといえば松本人志が好きな人。
ゴーストワールド
オシャレな雰囲気ですが、ストーリーはリアルな映画です。
監督/テリー・ツワイゴフ
出演/ソーラ・バーチ 、スカーレット・ヨハンソン 、
スティーヴ・ブシェミ
(2001年・米)
主人公のイーニドという女の子は高校を卒業したんですが、働きもせず勉強もせずブラブラしています。将来への漠然とした不安におびえつつも、何か目標を見つけて努力することもなく、ただ漫然と日々を過ごしています。そんなある日ひょんなことから、ブルースレコードのコレクターでオタクっぽいシーモアというオッサンと出会い、ちょっと彼に惹かれるものがあり、交流を始めます。一方イーニドの親友のレベッカは、マンションを借りたり働き始めたりと自立の道を歩み出します。そうして現実に向き合うレベッカと、現実逃避を繰り返すイーニドとの距離はだんだん離れていきます。
そんなに有名じゃなさそうな映画だし、僕もそんなに期待はしてなかったんですけど、いい映画ですね。タイトルは「ゴーストワールド」とちょっとホラー映画っぽいですが、決してお化けとかが出るわけではなく、主人公のイーニドにとっての現在生きている世界を比喩して言っているのでしょう。なかなかいいタイトルです。
僕は大学卒業と同時に就いた仕事は人間関係とかがイヤになって半年で辞め、対人恐怖症みたいなものになってバイトもせず、1年半ぐらい半引きこもり状態の生活をしていました。その時の僕はこの映画のイーニドと同じくかなり気持ちが鬱屈していて、世の中の何もかもがイヤでイヤで、誰も彼もが嫌いで嫌いで、本当に何もする気が起こりませんでした。
この映画の主人公のイーニドも僕も、何のとりえもないがプライドだけは高い、コンプレックスの塊のような人間です。自分が社会に出ても何もできないのは分かっていますし、それを人から責められると傷つくしムカつくし我慢できない、かといってプライドは高いから現実を見つめて努力もしない。だから人生が八方塞がりになってしまいます。
しかしこの映画の展開にはある意味びっくりしましたね。僕は何とか働くようになり、人よりは劣っているものの昔の自分よりは社会適合性も身につけたのですが、イーニドが最後まで八方塞がりのままだとは思わなかったです。何かのきっかけで前向きに生きるようになって、彼女の将来に希望が見えるようなラストだと思っていたんですけどね。
かなり悲しいラストです。この映画のラストはちょっとぼやけていて、監督が逃げたなという印象があるんですが、少なくともハッピーエンドではないでしょう。色々な解釈が可能だと思うんですが、僕はイーニドは死んだと解釈しました。
だからこの映画はジャケットやイントロダクションで抱くイメージと異なり、決して女の子向きのちょっとオシャレな爽やか青春映画ではありません。主人公達の着てる服や部屋の装飾が結構オシャレなので映像の雰囲気は明るいんですが、ストーリーはけっこうリアルで救いのない話です。評価は★6ですね。好きな映画ではないんですが、映画としてはいい映画だとは思います。
ちなみにこの映画の主演のソーラ・バーチは「アメリカン・ビューティー」で見たことがあります。その時はそんなに印象に残っていなかったんですが、この映画ではかなり良い演技をしてると思います。本人もそろそろ演技派女優への脱皮を考えているんでしょう。しかし、シーモアを演じたスティーヴ・ブシェミという人の演技はそれ以上にすごかった。この人は僕が全く知らなかった俳優です。調べてみると僕の見た映画では「アルマゲドン」に出てたようなんですが、映画自体がしょうもなくて僕が半分寝てたせいもあるのかまったく覚えていません。しかし、僕が最近見た映画の中では、間違いなくトップの演技でした。さえない中年男のほろ苦い哀愁がにじみ出ていて、とてもカッコ良く見えました。
<ゴーストワールド 解説>
全米の若者の間でカリスマ的人気を誇るダニエル・クロウズの新感覚コミックを「アメリカン・ビューティー」のソーラ・バーチ主演で映画化したおしゃれでキッチュでとびきり切ない青春ストーリー。イーニドとレベッカは高校を卒業した今も進路も決めないまま好きなことだけしてフラフラする毎日。ある日、二人は新聞の出会い系の広告に載っていた中年男をダイナーに呼び出し、待ちぼうけを食っている惨めな姿を見て暇を潰すのだったが……。