忍者ブログ
ヤスオーのシネマ坊主
あるお方の『シネマ坊主』のパクリです。
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
リンク
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
ヤスオー
性別:
男性
自己紹介:
松本人志と映画が好きな人。
どっちかといえば松本人志が好きな人。
バーコード
ブログ内検索
[1] [2]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ALWAYS 三丁目の夕日

「終わってほしくない」と思わせる見てて心地よい映画

r082081214L.jpg ★★★★★★★★★★ 

 監督/山崎貴

 出演/吉岡秀隆、堤真一、小雪

 (2005年・日)

 
 昭和33年の、東京の下町「夕日町」で暮らす人々を描いた話です。鈴木則文が営む「鈴木オート」という小さな町工場に、田舎から集団就職でやって来た六子が住み込みで働くことになります。しかし六子はボロくて小さな町工場にがっかりです。また、鈴木オートの向かいで駄菓子屋を営みながら細々と文筆業もしている茶川は、行きつけの飲み屋のおかみに頼まれ淳之介という子どもを預かることになります。

 この映画の原作者である西岸良平は、僕がかなり好きな漫画家なんです。この映画の原作となっている「夕焼けの詩」はもちろんのこと、「鎌倉ものがたり」、「たんぽぽさんの詩」、「ポーラーレディ」、「赤い雲」、「タイムスクーター」等この人の作品はほとんどと言っていいぐらい読んでいます。僕みたいに原作を先に読んでいて後から映画を見た人というのはたいていその映画をけなすものなんですが、この映画はちょっと違いましたね。原作ファンの僕が不満を何一つ漏らさないぐらい素晴らしい出来です。
 
 僕はせっかちなので、そこそこいい映画でもけっこう時間を長く感じてしまいます。しかしこの映画は2時間を超える長尺の映画なのに「終わってほしくない。」と思わせる映画なんです。小さい頃テーマパークなんかに行って、本当に楽しくて、楽しいからこそ時間が経っていくのがイヤでイヤで仕方がないというあの感情ですね。それぐらいこの映画は見てて心地良いです。こんなことを思わせる映画なんてほんとに少ないですよ。映像やストーリーや演出などすべて含めて「昭和30年代」というテーマパークを見事に再現しています。

 もちろん僕もバカじゃないので、実際の昭和30年代がここまで心地よい世界ではなかったことは分かります。しかしそんなことはどうでもいいんです。僕は実際に昭和30年代を生きたわけではないし、ファンタジー映画としてこの映画を楽しんでいましたから。まあそうは言いながらも、日本人が失ってしまったものがこの時代には確かにあったんだというノスタルジックな気持ちはちょっとは生まれてしまうんですけどね。それは僕が日本人だからでしょう。

 まあ、よほど人情喜劇や懐古主義が嫌いな人でないかぎり、この映画は心の琴線に触れてくると思いますよ。僕は不覚にもこの映画では涙を流してしまいましたから。今まではどんな感動作を見ても涙ぐむぐらいはあっても涙を流すというのはほとんどなかったんですけどね。僕が年をとって涙腺がゆるくなったせいもあると思いますが、淳之介を演じた須賀健太は恐るべき逸材だなあとつくづく思いました。僕が泣いてしまったのは淳之介の父親が茶川の家にやって来るエピソードですからね。

 茶川役の吉岡秀隆はあまり好きな俳優ではないんですが、この映画に限って言うならば彼の演技力は素直に認めざるをえないです。漫画では茶川は老人なのではじめは違和感があったのですが、途中からはまったく気にならなかったです。同じように堀北真希演じる六子も漫画では「六さん」と呼ばれる男なのですが、こちらも気になりませんでした。僕の妹はこういう漫画とキャラ設定が違うところにムカついて見るのを途中で止めたと言っていましたが、僕は別に映画の設定でもいいと思いますね。若くてきれいな女性なんかまるで出てこない漫画なので、せめて映画にするなら堀北真希ぐらい出しとかな華がなさすぎるやろとも思いますし。

 しかし、小雪は間違いなくミスキャストですね。この人だけが最後まで違和感がありました。まあ、この映画の完成度に比べたら小さなことです。点数は満点です。

 この映画のストーリーはほとんど漫画と同じですから、原作に助けられた面はあると思います。漫画にはないエピソードである「見えない指輪」の話は面白くなかったですし。しかし、漫画の短い話を自然に繋げている点は感心したし、クライマックスの夕日の映像の出来も良かったですし、監督の手腕もなかなかのものだと思います。というより、涙を流すぐらい感動してしまった以上、満点をつけないとしょうがないですね。

  




<ALWAYS 三丁目の夕日 解説>

 昭和33年の古きよき日本を舞台に、家族の触れ合いを描いた心温まる人情ドラマ。下町の住民たちには、吉岡秀隆、堤真一、小雪、薬師丸ひろ子ら豪華メンバーが集まり、昭和の雰囲気を存分にかもし出している。『Returner リターナー』などVFXを使用した作品の多い山崎貴監督が、本物に引けを取らないほど美しい夕焼けを作り出すことに成功した。ほかにも建設途中の東京タワーなど、当時の日本が忠実に再現されている。
 東京下町の夕日町三丁目に住む鈴木家に、集団就職のために上京してきた六子(堀北真紀)が住み込むことになる。また鈴木家の向かいにある駄菓子屋の店主(吉岡秀隆)も、見ず知らずの少年の面倒を見ることに……。  

 

PR

バッファロー’66

この映画の魅力は愛すべきキャラクターの主人公です。

r081393545L.jpg ★★★★★★★★★★ 

 監督/ヴィンセント・ギャロ

 出演/ヴィンセント・ギャロ、クリスティーナ・リッチ、
      アンジェリカ・ヒューストン

 (1998年・米)

 ニューヨーク州バッファローで生まれた主人公ビリー・ブラウンは、5年ぶりに刑務所から釈放されました。彼は自分の両親には5年間政府の仕事で遠くに行っていたと言っており、なおかつ自分は仕事で成功し、結婚もし、裕福な暮らしをしているとまで嘘をついています。彼は出所後すぐに両親に電話をして実家に帰ると言ったものの、実際には独身なのでこのまま1人で家に帰るわけにもいかず、通りすがりのダンス・スクールでレッスン中だった女性レイラを拉致し、両親の前で妻のふりをするように言います。

 この映画の何がいいと言ったら、まず予告編です。これだけクールでかっこいい予告編は僕は見たことがありません。音楽も、どうしてこの音楽を使うことを思いついたのかと感心するぐらいかっこよく、僕の携帯の着信音になっています。若者の間でかなり流行った映画なのは知っていたので、どうせしょうもないオシャレなだけの映画だろうと思って見ていなかったのですが、他の映画のDVDに入っていたこの映画の予告編を見たらむしょうに本編を見たくなりましたね。たぶんこんな中身が一切分からない変わった予告編を手がけたのはおそらく監督でしょうが、この人のセンスがすごいのは予告編を見ただけで分かります。

 本編も、撮り方や編集が斬新で、映像もつや消しをしたかのような感じのクールで味のあるものです。監督の個性がこれでもかというぐらい詰め込まれています。そして、僕が過去に抱いていたイメージである、オシャレなだけで面白くない映画では決してありません。ストーリーは単純ですが、とにかく主人公のキャラクターが魅力的です。ここまで愛すべき主人公を作られたら、それだけでこの映画を評価せざるをえないです。

 その主人公のビリーは自己中心的だし言動は荒っぽいしマザコンだしバカなんですが、とにかくシャイで純粋な人間です。友達だとしたら一緒にいて疲れるけども、何だかんだ言ってずっと友達でいれそうなタイプです。自分なりの規範もきちんと持っています。立ち小便をするのに躊躇しますし、レイラを拉致した時の脅し文句が「おれの言うことを聞いたら親友になってやる。ただし失敗したら絶交だ。二度と口をきかない。」ですからね。レイラにも暴力は決してふるいませんし。

 僕がビリーのキャラクターを好きになったのは、「妻役」のレイラを拉致し彼女の車で実家に行こうとしたら、その車がマニュアル車なので運転できず、レイラに運転をさせるとこぐらいからですかね。かなり最初の方だと思いますよ。ボーリングが得意というところもいいです。こういうつまらないことに優れている男は本当に魅力的です。ビリーはかっこつけてるけれども実はダメな男ということで母性本能をくすぐりそうなので女性にウケるのかもしれませんが、男もきっと気に入ると思いますよ。僕を含めほとんどの男はコンプレックスを抱えていると思いますし。

 この映画の序盤は、両親の前でレイラとの幸せな結婚生活を演出するビリーを描いているんですが、ビリーの両親が想像以上にひどい親なんですよ。自分の子どもであるビリーに興味がないんですからね。親として最低です。両親と会って話をしだしてからレイラが明らかにビリーに同情し、しまいには「妊娠している」とまで言ってしまいますから。たしかに、ビリーがチョコレートアレルギーということすら憶えておらず、ビリーの写真もろくにとってくれておらず、まったくビリーのことなんて気にかけていない両親に、一生懸命自分の幸せを伝えようとしているビリーの姿は僕から見ても非常にけなげです。彼が粗野な性格なのは、こんな親に育てられてずっと孤独だったからなんだなあということも分かってきます。

 だからレイラがビリーに惹かれるのも納得できます。このレイラ役は「アダムス・ファミリー」でかわいい少女だったクリスティーナ・リッチが演じているのですが、彼女をレイラ役にキャスティングしたということもこの映画の大きな成功要因だと思いますね。それぐらいハマっていましたから。ちょっと太っているのですが、もしかするとこの映画のためにわざと太ったのではないでしょうか。貧相なビリーを支えるレイラには、これぐらい母性を感じさせる体型の方がいいです。たぶんみんなが気に入るシーンだと思いますが、この2人がぎこちなく角度をつけて離れてベッドに横たわっているシーンは最高です。ビリーが女性が苦手だからこうなっているんですけどね。

 ラストは何かどんでん返しがあるのかなと思いきや、静止画像で終わるというとんでもない終わり方なんですけど、ストーリー的には特に何もなかったですね。結局はとんでもなく甘いラブストーリーでした。しかし何にしろこの映画は気に入りましたね。評価は満点です。DVDを買うかもしれないです。「シネマ坊主」で松本人志も言っていましたが、まさに何べんも見たくなるタイプの映画です。





<バッファロー’66 解説>

  ヴィンセント・ギャロを一躍スターダムに伸し上げたラブ・ストーリー。愛を知らないアナーキーな男と、彼に惹かれる女の寡黙な愛を描く。グレーを基調にしたビジュアルや独特のスロー描写など、他に類を見ないアーティスティックな作風が見もの。共演にクリスティーナ・リッチ。5年の刑期を経て出所してきたビリー。仕事で家を離れ、両親に結婚したと偽っていた彼は、実家に戻るため通りすがりの女・レイラを拉致する……。 

マルホランド・ドライブ

不条理で悪夢のような世界を感じるだけで面白い映画

r161658820L.jpg ★★★★★★★★★★ 

 監督/デヴィッド・リンチ

 出演/ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、アン・ミラー

 (2001年・米)

 
 ハリウッド女優になるために、有名女優である叔母を頼ってきたベティは、叔母の家でリタと名乗る記憶喪失の女性が隠れているのを見つけます。リタが唯一覚えていた言葉「マルホランド・ドライブ」を手がかりに、ベティは彼女の記憶を取り戻す手助けをします。ある日偶然入ったレストランでリタは「ダイアン・セルウィン」という名前を思い出し、ふたりはダイアンの住所を調べ家を訪ねますが、そこには腐った女の死体がありました。

 この映画は満点です。僕はデヴィッド・リンチの作品はかなり昔に「エレファント・マン」を見たぐらいなので、この映画の世界観はむちゃくちゃ衝撃的でしたね。始まってすぐのダンスのシーンから不穏な空気が漂っていて、「ああ、この映画はそんじょそこらの映画とは違うな。」と思わせます。わけのわからないストーリーと映像はこちらの理性を完全に麻痺させるんですが、この映画の持つ底知れない不気味な雰囲気が、感性的な側面を刺激してくるんですよ。それは決して不快ではなく、むしろ心地いいですね。酒に酔ったような感覚と似ています。この監督はイメージ作りが非常に上手だと思いますよ。映像だけでもこの映画は十分に見る価値があります。

 特に、「クラブ・シレンシオ」のシーンはこの映画の中でもとりわけ異様な輝きを放っており、とてもインパクトのあるシーンです。ここはおそらくストーリーの種明かしのようなところだと思いますし、監督も気合いを入れて作ったのでしょう。彼の持つ独自の世界観が一番色濃く出ていると思います。

 ストーリーはとにかく難解です。時間も空間も入り乱れていて何が現実なのかすら分からないような話で、考えれば考えるほど頭がこんがらがってきます。多くの同じ顔をした登場人物が途中で名前も人格も立場も変わるので、この映画が2つの世界を描いているのは間違いないんですけどね。まあ、「クラブ・シレンシオ」でのベティとリタの様子や、司会者の「すべてはまやかし」というセリフから普通に考えたら、この2つの世界というのは、ブルーボックスを開けるまでが「ある人物」の妄想の世界で、その後は「ある人物」の現実の世界で、結局はこの映画は田舎娘である「ある人物」がハリウッドを目指し、女優とレズの関係になり、結局は恋にも夢にも破れて悲惨な末路を辿るストーリーなんだなと思います。いい夢を見た後というのは切ない気持ちでいっぱいになりますが、この映画も切なさと悲しさでいっぱいです。

 しかし、この映画は完璧に解釈するのは不可能だと思いますし、僕は解釈する必要すらないと思いますね。僕がこの映画で一番気に入ったところというのは、映像においてもストーリーにおいてもわけが分からないところですから。この映画はわけがわからないからこそ見ていて不安になるし、底知れない不気味さを感じるんだと思います。

 他の映画だったら映像はともかくストーリーが分からなかったら全然面白くないですけどね。僕が最近見た映画でストーリーが難解な映画を挙げるとすれば「ドニー・ダーコ」と「メメント」ですが、僕のこの2つの映画についての評価は決して高くないです。しかし「マルホランド・ドライブ」は、その不条理で悪夢のような世界を「感じる」だけで十分面白いですし、逆に意味をもってしまうとその不気味な世界観が壊れてしまい、つまらなくなるような気がしますね。

 ただ、まったくむちゃくちゃな話ではないですよ。おそらく「ある人物」の妄想であろう世界に登場する殺し屋がすごい間抜けなことや、僕はタバコをとてもたくさん吸うので映画で灰皿が出ると絶対見てしまうんですが、この映画にも何度か登場する灰皿なんかには、きっと意味があると思います。ちょこちょこ出てくる不気味なカウボーイも何を表しているかはだいたい分かります。ストーリーを理解する手がかりはこれ以外にももっとたくさんあると思いますよ。僕はストーリーを理解するのを放棄しましたが、純粋に謎を解くということだけでも、この映画は楽しめるんではないでしょうか。 

 この映画はキャスティングも文句なしです。主演のナオミ・ワッツは「ザ・リング」に出てた人ですね。「ザ・リング」の役はそんなに難しくない役だからあまり印象に残っていませんでしたが、この映画ではすさまじい熱演じゃないですか。明と暗を見事に演じ分けていましたよ。ローラ・エレナ・ハリングという人は初めて見ましたが、この女優も妖艶な美しさが映画の雰囲気に合っていて非常に良かったです。






<マルホランド・ドライブ 解説>

  ある真夜中、マルホランド・ドライブで車の衝突事故が発生。ただ独り助かった黒髪の女は、ハリウッドの街までなんとか辿り着き、留守宅へ忍び込む。すると、そこは有名女優ルースの家だった。そして、直後にやってきたルースの姪ベティに見つかってしまう。ベティは、とっさにリタと名乗ったこの女を叔母の友人と思い込むが、すぐに見知らぬ他人であることを知った。何も思い出せないと打ち明けるリタ。手掛かりは大金と謎の青い鍵が入った彼女のバッグ。ベティは同情と好奇心から、リタの記憶を取り戻す手助けを買って出るのだが
…。

エターナル・サンシャイン

自分の一番大切な物が「思い出」の僕は感動しました。

r082043582L.jpg ★★★★★★★★★★ 

 監督/ミシェル・ゴンドリー

 出演/ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、
     キルスティン・ダンスト

 (2004年・米)


 ジョエルという主人公の青年は、ケンカ別れの状態になっている恋人のクレメンタインが勤める本屋に行きましたが、あまりにもよそよそしい対応をとられました。あろうことか彼女は、別の男となれなれしくキスまでしていました。絶望に打ちひしがれたジョエルは、友人の話により、クレメンタインがラクーナ社という会社で自分についての記憶を消したということを知ります。そして彼は、自分もクレメンタインについての記憶を消すことを決意します。

 この映画は設定はちょっと変わっていますが、一応ラブストーリーなんでしょう。しかし「タイタニック」みたいな単純なメロドラマと違って、時間軸をぐちゃぐちゃにした捻りのある構成の映画なので、ストーリーを追うことにも集中しないといけないですから、見終わった後すごく感動してワンワン泣くとかはないです。ただ、見ている間は何とも言えないしめつけられるような切なさが胸の奥の方に引っかかってきます。そして、見終わった後は静かな感動がいつまでもさめません。非常に印象に残る映画です。

 この映画は、ラクーナ社による主人公のジョエルから元恋人クレメンタインについての記憶を消す作業の過程で、ジョエルの頭の中の世界でクレメンタインとの思い出が消えていく様子を中心に描いているんですが、その世界には自分が彼女についての記憶を消そうとしていることをしっかりと認識しているジョエルがいます。当たり前のことですが、彼の思い出の中には消すには惜しい幸せだった頃の宝物のようなものもあります。彼は思い出が消えていくことがだんだん辛くなってきて、ついには記憶を消す作業をやめるよう自分の頭の中の世界で叫びますが、その声はラクーナ社の連中の耳には届きません。

 自分の記憶が消されていくことに必死になって抵抗しているジョエルの姿に対しては、「バカだなあ。別れるだけならともかく、思い出まで消そうとかしょうもないことするからやってから後悔するんや。」と思うのが普通かもしれないですが、不思議とそうは思わなかったですね。僕は普段から自分の一番大切なものは「思い出」だと周りに豪語している人間なので、思い出が消されていくという悲しさはすごく分かるし、とにかくジョエルが哀れで仕方なかったです。

 色々な思い出が次々に映し出されながら消えていくので、その時々の2人の仲良さそうな姿と、現在の2人の状況やジョエルの思いが対比され、描写がより切ないものになっていきます。この2人は現実世界ではお互いについての記憶すら消す選択をした2人ですからね。ジョエルの記憶を消す作業が終われば、まったくの赤の他人になるわけじゃないですか。だからこそ、思い出の世界でジョエルとクレメンタインが何げない会話をしているだけで、どうしようもなく痛々しくて、いちいち感動してしまいました。
 
 この2人を演じている役者の演技も良かったです。ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットですね。どちらの役者もこの映画を見る前から好きなのですが、さらに株が上がりました。特にケイト・ウィンスレットの、ジョエルの頭の中の世界でのクレメンタインの演技は良かったですね。けっこう難しいと思いますよ。ただ、ラクーナ社の人間を演じているキルスティン・ダンストは、おいしい役のはずなのに、全然印象に残りませんでした。この人が売れてることについて、僕だけでなく多くの人、特に男性は、不思議に思っていると思います。

 あと、この映画は映像も素晴らしいです。特殊な世界を描いているだけあって映像は全体的に一風変わったムードで、見ごたえのある映像はたくさんあるんですが、間違いなく一番いいシーンはジョエルとクレメンタインが手を繋ぎながら氷の上に横たわって、空を見上げるシーンです。これを見ただけでこの映画を見て良かったなと思えるシーンですね。

 点数は満点です。ラクーナ社の人間のエピソードが、キルスティン・ダンストのせいもあってかイマイチインパクトがなかったんですが、ジョエルとクレメンタインの話だけで十分満足できるいい映画ですね。自分の一番大切なものが「思い出」の僕だからこそ、特に感動したのかもしれませんけど。





<エターナル・サンシャイン 解説>

   『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』の脚本家、チャーリー・カウフマンの最新作。監督は『ヒューマンネイチュア』のミシェル・ゴンドリー。お互いを忘れるために記憶除去手術を受けるカップルに、『マスク』のジム・キャリーと『タイタニック』のケイト・ウィンスレット。交錯する時間軸のヒントとなるケイト演じるクレメンタインの髪の色は要チェック。
 ジョエル(ジム・キャリー)は、別れた恋人・クレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が自分との思い出を消すために記憶除去手術を受けたことを知り、自分もその手術を試すが……。

 

 

ショーシャンクの空に

自分の人生の中でベスト5に入る素晴らしい映画

r080952994L.jpg ★★★★★★★★★★ 

 監督/フランク・ダラボン

 出演/ ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン、

     ウィリアム・サドラー

              (1994年・米)

 妻とその愛人を殺したという無実の罪によってショーシャンク刑務所にやって来た、元エリート銀行員のアンディが主人公です。最初は周りに心を開かなかったアンディでしたが、ロックハンマーの調達を依頼したのをきっかけに調達屋のレッドと友好関係を築き、次第に他の刑務所の仲間とも打ち解けていきます。そしてアンディはその高い能力を見込まれ、刑務所長に重要な仕事を任されるようにもなります。そしてある日、アンディが起こしたとされている事件の真相を知る男が入所してきて、アンディにとっては自分の無実を証明する絶好のチャンスとなります。

 この映画は周囲の複数の人間から「むちゃくちゃいい映画だ。」と聞いていました。僕の妹なんかは、自分の人生でベストワンの映画だとまで言ってのけました。しかし具体的にどこがいいのかを聞いても、「いやとにかくすべてがいいから。」とかわけのわからない答えしか返ってこなかったし、「古い映画だし今さら見るのもなあ…。」みたいな気持ちが僕の中であったので、今まで見るのを避けてきたのですが、嫁はんがDVDを借りてきたのでついでに横で見てみました。びっくりしましたよ。僕が今までに見た映画の中で1位とは言わないですが、ベスト5には入るぐらいの素晴らしい映画です。感動する映画というカテゴリーだけで考えると第1位です。こんなに見た後に気分が良い映画は他にありません。1つ1つのシーンが鮮明に心に焼き付いています。この映画に出会えて良かったなあと心から思える作品です。一緒に見た嫁がそんなにこの映画を評価しなかったので、「お前はやっぱり映画好きじゃない。というか人の心がない。何でこの映画の良さが分からんねん。」と激しく責め立てたぐらいです。

 主人公のアンディは元エリート銀行マンで、普段は静かでおとなしいし、ちょっと神経質そうな感じもするのですが、実はユーモアもあるし、面倒見もいいし、心の奥には熱いものも秘めている、非常に魅力のある男です。そんなアンディが刑務所の中で起こす出来事は、冷たいビールのエピソード、図書室のエピソード、「フィガロの結婚」のエピソードなど、どれも非常に面白いしすがすがしいし、心に残るエピソードばかりです。毛色の違う彼と他の囚人達との間で仲間意識が育っていくのも分かる気がします。

 もちろん刑務所なので、楽しいことばかりでなく辛いことも多いです。アンディの場合無実の罪で投獄されたんですからなおさら納得できないでしょう。しかし彼はゲイに追いかけ回されたり、独房に放り込まれたり、投げ出したくなるような時間の中でも、いつも前向きに生きています。そして、どんな目に遭っても、自分の信念は絶対に曲げません。終盤の雨の中のシーンは、まさに胸のつかえがすべておりて、これ以上ないぐらい爽快感のあるシーンです。この映画で一番の感動の場面でしたね。

 アンディは銀行マンとして培った能力を認められて、所長の財産を管理したり看守達の納税の相談にのったりと特殊な業務を任せられていたし、学のない囚人達に高卒の資格を取らしてあげようと勉強を教えたりもしていたので、他の囚人達よりは刑務所内でのポジションは高かったと思います。そういうことから僕はアンディの気持ちについて途中から勘違いしていました。だからこそ、終盤の展開にはびっくりしたし、感動も大きかったですね。「こいつは何て奴だ。すごすぎる。」とも思ったし、「良く出来た脚本だなあ。」とも思いました。
 
 また、この映画はアンディが主人公の映画ですが、同時にレッドという男の映画でもあります。レッドはアンディの親友ですが、生き方はまるで違います。胸に熱いものを秘めているアンディと異なり、レッドは自分の人生に対してのあきらめの気持ちがにじみ出ており、日々淡々と生きています。もちろんどちらの生き方が良いとかではなく、刑務所の中で失われた時間の長さや、何度も保釈申請をしながらいつも却下されている現実などを考えると、レッドの生き方にも説得力は十分にあります。しかしアンディと友情を育み、アンディの側で彼の生き方をずっと見続けてきたレッドの中で、何かが変わっていきます。そんな彼が終盤で仮釈放審議の時に語る一つ一つの言葉は、非常に重みがあり、心に響いてきます。

 この映画は「希望」をテーマにしています。僕は普段から「もうおれの人生夢も希望もないわ。」とよく口にする、完璧に悲観主義の人間ですが、そんな僕でもこの映画を見たら励まされましたし、勇気づけられましたし、「希望」という言葉の本当の意味について分かりました。これからの人生でくじけそうな時には、この映画のことを思い出すことにします。

 あと、こんないい映画がアカデミー賞を1つも獲っていないことにびっくりしました。同じ年のアカデミー賞を多くの部門で獲得した「フォレスト・ガンプ/一期一会」は僕も昔見ましたが、いかにも賞狙いだなあという雰囲気の大作で、「ショーシャンクの空に」の方が断然いい映画です。アンディとレッドを演じたティム・ロビンスとモーガン・フリーマンの演技も良かったし、複数部門で賞を獲得しても不思議でないんですけどね。
 

 




<ショーシャンクの空に 解説>

 妻とその愛人を射殺したかどでショーシャンク刑務所送りとなった銀行家アンディ。初めは戸惑っていたが、やがて彼は自ら持つ不思議な魅力ですさんだ受刑者達の心を掴んでゆく。そして20年の歳月が流れた時、彼は冤罪を晴らす重要な証拠をつかむのだが……。
忍者ブログ | [PR]
| Skin by TABLE e.no.ch