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ヤスオーのシネマ坊主
あるお方の『シネマ坊主』のパクリです。
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バッファロー’66

この映画の魅力は愛すべきキャラクターの主人公です。

r081393545L.jpg ★★★★★★★★★★ 

 監督/ヴィンセント・ギャロ

 出演/ヴィンセント・ギャロ、クリスティーナ・リッチ、
      アンジェリカ・ヒューストン

 (1998年・米)

 ニューヨーク州バッファローで生まれた主人公ビリー・ブラウンは、5年ぶりに刑務所から釈放されました。彼は自分の両親には5年間政府の仕事で遠くに行っていたと言っており、なおかつ自分は仕事で成功し、結婚もし、裕福な暮らしをしているとまで嘘をついています。彼は出所後すぐに両親に電話をして実家に帰ると言ったものの、実際には独身なのでこのまま1人で家に帰るわけにもいかず、通りすがりのダンス・スクールでレッスン中だった女性レイラを拉致し、両親の前で妻のふりをするように言います。

 この映画の何がいいと言ったら、まず予告編です。これだけクールでかっこいい予告編は僕は見たことがありません。音楽も、どうしてこの音楽を使うことを思いついたのかと感心するぐらいかっこよく、僕の携帯の着信音になっています。若者の間でかなり流行った映画なのは知っていたので、どうせしょうもないオシャレなだけの映画だろうと思って見ていなかったのですが、他の映画のDVDに入っていたこの映画の予告編を見たらむしょうに本編を見たくなりましたね。たぶんこんな中身が一切分からない変わった予告編を手がけたのはおそらく監督でしょうが、この人のセンスがすごいのは予告編を見ただけで分かります。

 本編も、撮り方や編集が斬新で、映像もつや消しをしたかのような感じのクールで味のあるものです。監督の個性がこれでもかというぐらい詰め込まれています。そして、僕が過去に抱いていたイメージである、オシャレなだけで面白くない映画では決してありません。ストーリーは単純ですが、とにかく主人公のキャラクターが魅力的です。ここまで愛すべき主人公を作られたら、それだけでこの映画を評価せざるをえないです。

 その主人公のビリーは自己中心的だし言動は荒っぽいしマザコンだしバカなんですが、とにかくシャイで純粋な人間です。友達だとしたら一緒にいて疲れるけども、何だかんだ言ってずっと友達でいれそうなタイプです。自分なりの規範もきちんと持っています。立ち小便をするのに躊躇しますし、レイラを拉致した時の脅し文句が「おれの言うことを聞いたら親友になってやる。ただし失敗したら絶交だ。二度と口をきかない。」ですからね。レイラにも暴力は決してふるいませんし。

 僕がビリーのキャラクターを好きになったのは、「妻役」のレイラを拉致し彼女の車で実家に行こうとしたら、その車がマニュアル車なので運転できず、レイラに運転をさせるとこぐらいからですかね。かなり最初の方だと思いますよ。ボーリングが得意というところもいいです。こういうつまらないことに優れている男は本当に魅力的です。ビリーはかっこつけてるけれども実はダメな男ということで母性本能をくすぐりそうなので女性にウケるのかもしれませんが、男もきっと気に入ると思いますよ。僕を含めほとんどの男はコンプレックスを抱えていると思いますし。

 この映画の序盤は、両親の前でレイラとの幸せな結婚生活を演出するビリーを描いているんですが、ビリーの両親が想像以上にひどい親なんですよ。自分の子どもであるビリーに興味がないんですからね。親として最低です。両親と会って話をしだしてからレイラが明らかにビリーに同情し、しまいには「妊娠している」とまで言ってしまいますから。たしかに、ビリーがチョコレートアレルギーということすら憶えておらず、ビリーの写真もろくにとってくれておらず、まったくビリーのことなんて気にかけていない両親に、一生懸命自分の幸せを伝えようとしているビリーの姿は僕から見ても非常にけなげです。彼が粗野な性格なのは、こんな親に育てられてずっと孤独だったからなんだなあということも分かってきます。

 だからレイラがビリーに惹かれるのも納得できます。このレイラ役は「アダムス・ファミリー」でかわいい少女だったクリスティーナ・リッチが演じているのですが、彼女をレイラ役にキャスティングしたということもこの映画の大きな成功要因だと思いますね。それぐらいハマっていましたから。ちょっと太っているのですが、もしかするとこの映画のためにわざと太ったのではないでしょうか。貧相なビリーを支えるレイラには、これぐらい母性を感じさせる体型の方がいいです。たぶんみんなが気に入るシーンだと思いますが、この2人がぎこちなく角度をつけて離れてベッドに横たわっているシーンは最高です。ビリーが女性が苦手だからこうなっているんですけどね。

 ラストは何かどんでん返しがあるのかなと思いきや、静止画像で終わるというとんでもない終わり方なんですけど、ストーリー的には特に何もなかったですね。結局はとんでもなく甘いラブストーリーでした。しかし何にしろこの映画は気に入りましたね。評価は満点です。DVDを買うかもしれないです。「シネマ坊主」で松本人志も言っていましたが、まさに何べんも見たくなるタイプの映画です。





<バッファロー’66 解説>

  ヴィンセント・ギャロを一躍スターダムに伸し上げたラブ・ストーリー。愛を知らないアナーキーな男と、彼に惹かれる女の寡黙な愛を描く。グレーを基調にしたビジュアルや独特のスロー描写など、他に類を見ないアーティスティックな作風が見もの。共演にクリスティーナ・リッチ。5年の刑期を経て出所してきたビリー。仕事で家を離れ、両親に結婚したと偽っていた彼は、実家に戻るため通りすがりの女・レイラを拉致する……。 

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