どっちかといえば松本人志が好きな人。
ブギーナイツ
「マグノリア」よりはかなり落ちるが嫌いにはなれない映画
監督/ポール・トーマス・アンダーソン
出演/マーク・ウォールバーグ、バート・レイノルズ、
ジュリアン・ムーア
(1997年・米)
ロサンゼルス郊外のディスコで皿洗いのバイトをしていた主人公のエディ・アダムスは、見た目も中身も普通の17歳の高校生ですが、ひとつだけ他の人と違うところがあって、それはあまりにも巨大なイチモツを持っていることでした。ある日、エディはポルノ映画監督ジャック・ホーナーにポルノ男優にならないかとスカウトされます。実家を飛び出してポルノ業界に飛び込んだエディは次々と主演作をヒットさせ、またたく間にポルノ業界のスーパーヒーローに登り詰めていきます。
この映画と同じ監督の作品で、昔に見た「マグノリア」はこれ以上ないほど良かったのですが、こっちはそんなに面白くなかったですね。でも、「マグノリア」と同じように、そこはかとなく人の優しさや温かさを感じることのできる、非常に見てて心地よい映画です。
大きなイチモツを武器にポルノ業界で成り上がりその後転落するエディが主人公で、一応は彼の成長を描いたストーリーなんですが、それ以外の登場人物の話にもかなり時間をさいており、ポルノ業界の人達の群像劇のようになっています。彼らはみな魅力的ですね。どいつもこいつもいい加減に生きとるなあとも思いますし、アンダーグラウンドな世界でしか生きることができないかわいそうな人達だなあとも思いますし、みんな固い絆で結ばれていてうらやましいなあとも思いますし、結局何が言いたいのかわからないですが、とにかく魅力的に映るのは間違いないです。
彼らはいくら頑張って成功しても、しょせんはアンダーグラウンドな業界なので、決して社会から認められることはありません。銀行は金を貸してくれないし、「教育上悪影響」ということで子どもの親権争いにも負けます。だからみんな劣等感を抱えながら生きています。それでも業界に活気があるうちは自分達の属する小さな世界の中でだけでも自尊心は保てたのですが、時代の変化でポルノ業界自体が衰退していき、それすらも無くなっていき、彼らの人生はより痛々しいものとなります。
ただ、この映画は、決して彼らの転落を描いて終わるのではなく、一時代を共に過ごした仲間の絆は決してなくなることがないという救いも描いています。暗闇の中でひとつ明かりがともった気がして、ホッとしましたよ。これからはそれぞれ違う道を生きていき、それぞれまた挫折をすることもあるだろうけど、何とかなるんじゃないかなと思わせてくれます。僕はこの映画を見た時は精神的に安定した時期でしたが、落ち込んでる時に見たらもっと感動したんじゃないかなと思います。
演じる役者もみな良かったですよ。なかなかクセ者揃いでした。主演のマーク・ウォールバーグは、演技うんぬん以前に安っぽい雰囲気がこの役に合っていましたね。ただ、やはり一番素晴らしかったのはバート・レイノルズですね。強烈な父性を醸し出していましたよ。僕はこの人は名前だけ知ってるけども出てる映画は見たことがなかったんですが、さすがの存在感です。
そういうわけで僕の好きな題材で演者も良くて音楽や映像など雰囲気もいい映画です。しかし点数は★5ぐらいですね。やはりまったりしたテンポとベタな展開が見てて退屈でした。
日本でもAVや「にっかつロマンポルノ」を題材にしたこんな映画を作ってほしいですね。「絶対にこういう業界に足を踏み入れたらダメだな」と思わせるドキュメンタリー番組なんかでよくあるただ暗いだけの作品ではなく、どこか哀しくどこか笑えて、こういう業界も悪くないかなと思わせる作品です。ひと昔前に「プラトニック・セックス」がありましたが、どう考えてもあれは僕の知っているAV業界の知識から考えるとウソくさいですし。
<ブギーナイツ 解説>
時は1977年。ディスコで皿洗いのバイトをしているエディ・アダムスは、その巨大な男性自身からポルノ映画監督のジャック・ホーナーにスカウトされる。エディが飛び込んだポルノ業界では麻薬に溺れて息子の親権を手放したポルノ・クイーンや、色情狂の妻の浮気に悩まされるマネージャーやゲイの男など、さまざまな人間が存在していた。やがて芸名をダーク・ディグラーとしたエディは、次々と主演作をヒットさせ、またたく間にポルノ界のスーパー・ヒーローに上り詰めていくのだが……。70年代後半のポルノ産業を舞台にした辛辣な人間ドラマ。