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ヤスオーのシネマ坊主
あるお方の『シネマ坊主』のパクリです。
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松本人志と映画が好きな人。
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アメリ

ギリギリのラインで魅力的な主人公を作ったのがすごい

r161649145L.jpg ★★★★★★★★★☆ 

 監督/ジャン=ピエール・ジュネ

 出演/オドレイ・トトゥ、マチュー・カソヴィッツ、ヨランド・モロー

 (2001年・仏)

 
 主人公の少女アメリは、ちょっと変わり者で神経質な2人である医者の父親と教師の母の間に生まれました。アメリは父親に抱きしめられるのが好きだったので、父親による健康診断の時に胸の鼓動が速くなってしまい、父親に心臓の病気と勘違いされます。そのため学校にも行かせてもらえず、勉強は母親に教えてもらうことになりました。友達が1人もできないまま育ったアメリは、毎日を空想ばかりして過ごしていました。そして時が経ち、大人になったアメリは、モンマルトルで1人暮らしをしながら、カフェで働いています。ある日アメリは自分の部屋で、アメリの前にその屋に住んでいたであろう男の子のおもちゃの詰まった宝箱を見つけます。そして、その宝箱を今はもう大人になっているであろうその男の子に届けようと決心します。

 この映画についてはいかにも女受けを狙ったオシャレぶった中身のない映画だなあというイメージをずっと持っていて、実際に見てみてもその通りの女受けの良さそうなオシャレな映画なんです。しかしそのオシャレさは決してうすっぺらいものではなくて、グロテスクなものがきらびやかな衣服を身にまとっているような感じで、かなりクセがあるんです。出てくる人は変な人ばっかりだし、映像もけばけばしくて派手ですし。しかし、どこか懐かしい雰囲気も漂っているし、音楽も上品だし、おとぎ話を訊いてるかのような落ち着きのある心地よい味わいもあるんです。ちょっと説明しづらい世界ですね。しかし箱庭のように作りこまれたこの映画の世界はファンタジーっぽいストーリーともきちんと合っているし、この監督が独特な素晴らしいセンスの持ち主であるのは十二分に分かります。

 ただ、この「十二分」というところがこの映画の唯一の欠点ですね。これが「十分」だったらこの映画は本当に文句のつけようがない満点の作品ですよ。ただ、ちょっと監督の「オシャレでしょう?」みたいなキザな感じが鼻につくんです。だからこの映画の評価は★9にします。完璧に僕の好き嫌いなんですけどね。

 この映画は大きくジャンル分けするとアメリとニノという青年のラブストーリーなんですが、実際はアメリと彼女の周辺にいる様々な人間とのエピソードが連なっている映画です。しかし決して話が切れ切れの散漫な映画ではありません。出だしの奇妙なノリでまずこの映画の世界観に興味を持ち、アメリが最初にダイアナ妃の事故のニュースでびっくりしたところからアメリの恋の結末までテンポ良くなおかつ自然に物語が流れていき、初めは意味がわからなかった数々のエピソードの謎もだんだんと解けていきます。この映画の話の進み方、構成は本当に上手いですね。ひねくれ者の僕がアメリの生い立ち、性格、行動を自然に理解していき、いつのまにかアメリという人間に魅力を感じるようになって、心からアメリの恋を応援していたぐらいですから。
 
 アメリはさすが1人だけの空想の世界で生きてきただけあって、かなり変わった人です。人を幸せにしたいという心がけは立派なんですが、やってることはかなり押し付けがましいし、まわりくどいし、社会性に欠けているのか犯罪すれすれの危ないこともためらいなく行います。そのくせ変に内気でコミュニケーションが苦手だからじれったいところもあります。普通に考えたらウザいうえにかなり危険な、絶対に関わりたくない人間なんです。しかしこの映画のアメリはなぜかそう見えないんですね。いじらしくて微笑ましく、見ててこっちの心も暖かくなります。アメリの周りの人が彼女の恋をバックアップするのも分かりますね。

 一歩間違えればとんでもない奴というギリギリのラインで、このような魅力的な人物像を作り出したというのはつくづくすごいと思います。アメリ役のオドレイ・トトゥもこれ以上ないハマリ役ですね。このキャラクターの完成は彼女の持つ雰囲気があってこそだと思います。

 ちなみにアメリの恋人のニノも仕事はポルノショップとお化け屋敷のバイトのかけもちで、趣味は証明写真を撮る機械のそばに捨てられている写真を集めることという、こちらもどう考えてもまともな人間ではないんです。こんな奴との恋なんて本当は応援したらいけないんですよ。アメリもしがないウェイトレスですし、こんな2人が結婚してもお先真っ暗じゃないですか。しかし、この映画の持つ不思議な雰囲気は、それをいいんじゃないのと思わせてくれます。僕らが普段抱いている「フリーターは将来性がない」という常識を吹き飛ばしてくれます。だから見終わった後はこのうえなく爽快な気分だし、間違いなくこの映画は癒し系の映画だなと思いますね。日本で流行った理由も分かります。

 まあ、好みの問題はもちろんあると思いますが、けっこう多くの人に受け入れられると思いますよ。松本人志の「シネマ坊主」でも書いてありましたが、僕もこの映画はもっと昔だったらこんなに流行らなかったと思うんです。しかし現代人は、考え方が柔軟になってこのような映画も受け入れるようになってきてるし、なおかつ普段の人生に疲れていてこういう元気が出る映画を求めるようになってきてると思いますよ。

 




<アメリ 解説>

  小さい頃から空想の世界が一番の遊び場だったアメリ。22歳になった今でも、モンマルトルのカフェで働き、周りの人々を観察しては想像力を膨らませて楽しんでいた。そして、あることをきっかけに、他の人を幸せにすることに喜びを見出したアメリ。他人の人生にこっそりおジャマしてはたのしい悪戯を仕掛け、人知れずお節介を焼いて回るのだった。そんなアメリも自分の幸せにはぜんぜん無頓着。ある日、不思議な青年ニノに出会ったアメリはたちまち恋に落ちてしまうのだったが、アメリは自分の気持ちを素直にうち明けることが出来ない……。
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